
日本語と英語で考える、論理的な文章を書くための4つのポイント
報告書や企画書などのビジネス文書や、論文やメディカルライティングを含む技術文書では、文章を論理的に構成することが極めて重要です。論理的な文章は、読者にとって明確で理解しやすく、一貫性を持ち、意図が正確に伝わるものです。この性質は言語が異なっても同様ですので、翻訳においても、原文の文章構成を理解することにより、原文の論理性を保った翻訳文を仕上げることができるようになります。
このブログでは、論理的な文章を作成するための基本的な原則の一端を説明し、日本文および英文の具体的な例文をご紹介します。
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二意にとられない文章にする
論理的な文章では、曖昧さを排除することが重要です。読者が異なる解釈をする余地を残すと、誤解が生じる可能性があります。具体的かつ正確な表現を用いることで、二意性を防ぎます。
例文(日本文)
曖昧な表現:
姉と私は急いで海外に行く叔父を空港に送って行った。
→ 「急いで海外に行く」「急いで送って行った」の2通りの解釈が生じる可能性があります。
私は姉と海外に行く叔父を急いで空港に送って行った。
→ 「姉と海外に行く叔父」「私は姉と(2人で)送って行った」の2通りの解釈が生じる可能性があります。
私は姉と急いで海外に行く叔父を空港に送って行った。
→ 「姉と海外に行く叔父」「私は姉と(2人で)送って行った」と「急いで海外に行く」「急いで送って行った」の2×2通りの解釈が生じる可能性があります。
明確な表現:
姉と私は海外に行く叔父を急いで空港に送って行った。
→ 「急いで」と「送って行った」の関係が明確なため、「急いで送って行った」のは「姉と私」、「海外に行く」のは「叔父」であるということが明らかで、それ以外の解釈が生じません
例文(英文)
曖昧な表現:
After tightening the bolts, apply the lubricant to the shaft.
→ 「After」 が順序を示す場合と、条件を示す場合の2通りの解釈が生じる可能性があります。(同じ表現でも、前後の文脈が明らかな場合と、ディスプレイの表示など文脈がわかりづらい場合とでも誤解を生じる可能性が異なります)
順序を示す場合:「ボルトを締めた後でシャフトに潤滑剤を塗る」という作業の流れを指示していると解釈できます。
条件を示す場合:「シャフトに潤滑剤を塗るのは、ボルトを締めた後でなければならない」という条件を設定しているようにも解釈できます。この場合、「ボルトを締めた後」が潤滑剤を塗るための前提条件だと考えられます。
明確な表現:
First, apply the lubricant to the shaft. Then, tighten the bolts securely.
→「First」や「Then」など順を示す用語を使用することにより、作業の流れを指示していることが明らかです。
並列表現を意識する
並列表現(parallel structure)とは、リストや複数の項目を記載する際に、文法的構造を統一する方法です。この技法を用いることで、読みやすく、読み手の記憶に残りやすい文章になります。
例文(日本文)
不統一な例:
プロジェクトの目的は、コスト削減、効率の向上、そして高品質な製品を作ることです。
→ この例文では、リストの各項目が異なる文法形式で表現されています。「コスト削減」「効率の向上」は名詞句、「高品質な製品を作ること」は動詞句です。このような異なる形式が並んでいるため、文法的な一貫性が損なわれ、文章が読みづらくなっています。
統一された例:
プロジェクトの目的は、コストを削減し、効率を向上させ、高品質な製品を提供することです。
→ リストの各項目が動詞句で統一されており、文法的な一貫性が保たれています。「削減し」「向上させ」「提供する」という形で並べることで、情報が整理されて読みやすく、理解しやすくなっています。
例文(英文)
不統一な例(Non-parallel):
The goals of the project are to reduce costs, improving efficiency, and the production of high-quality products.
→リストの各項目が異なる文法形式で表現されています。「to reduce costs」 は不定詞句、「improving efficiency」 は動名詞句、「the production of high-quality products」 は名詞句です。このため、文章が読みづらくなっています。
統一された例(Parallel):
The goals of the project are to reduce costs, improve efficiency, and produce high-quality products.
→ リストの各項目がすべて同じ文法形式で表現されています。「to reduce costs」「to improve efficiency」「to produce high-quality products」はすべて不定詞句です。この統一性により、文章が整理されていて読みやすく、記憶に残りやすい文章になっています。
用語を常に同じ意味、定義で使用する
専門的な文章では、用語の一貫性が特に重要です。同じ意味や定義を持つ事象について別の用語を使用すると、それが同じものを指していることが読者に伝わらず、文章の正確な理解を妨げる可能性があります。また、同じ用語を異なる意味・定義で使用した場合も、読者の混乱を招きます。
例文(日本文)
一貫性のない例:
この装置の出力は他のセンサーの測定結果とは異なります。また、この機器の発信値は...。
→ 「出力」「測定結果」「発信値」は同じ事象を指している可能性がありますが、読者には明確に伝わりません。
一貫性のある例:
この装置の出力は他のセンサーの出力とは異なります。また、この機器の出力は...。
→ 一貫して「出力」という用語を使用することで、同じ事象を指していることが明確になります。
例文(英文)
一貫性のない例(Inconsistent):
The output of this device differs from the measurement results of other sensors. Additionally, the emission value of this equipment...
→ 「output」 「measurement results」 「emission value」 が同じ事象を指している可能性がありますが、読者にはそれが明確に伝わりません。
一貫性のある例(Consistent):
The output of this device differs from the output of other sensors. Additionally, the output of this equipment...
→ 用語 「output」 を統一して使用することで、同じ事象を指していることが明確になります。
Signpostingを活用する
Signpostingとは「道標、道しるべ、明確な手がかり」という意味で、読者が文章の構造や進行を把握しやすくするための言葉やフレーズを指します。具体的には、文章の始まりや転換点、結論部分で適切なフレーズを使用して、次に何が述べられるかを示唆します。これにより、読者が文章全体の流れを理解しやすくなります。
例文(日本文)
Signpostingを活用した例:
まず初めに、プロジェクトの背景について説明します。その後、調査結果を述べ、最後に結論を提示します。
→ この例では、「まず初めに」「その後」「最後に」というフレーズが、それぞれ文章の段階を明確に示しています。読者は、続く文章のどの部分で何を期待すれば良いかを把握しやすくなります。
例文(英文)
Signpostingを活用した例:
First, we will discuss the background of the project. Next, the findings will be presented, and finally, the conclusions will be outlined.
→ この英文では、「First」「Next」「Finally」というフレーズが、文章の進行を段階的に示しています。読者は、内容がどのように展開するかを予測しながら読み進めることができます。
化学論文やメディカルライティングでは、一般的にフォーマットや構成が決められています。これは、内容を追いやすくするための設計で、読者が効率的に情報を理解できるようにするためのSignpostingの役割を果たしているとも考えられます。
まとめ
文章の論理性は、ビジネス文書や技術文書において欠かせない要素です。そして、それらの文章の翻訳文は、原文と同じ論理性を保っていることが期待されます。曖昧さを排除し、並列表現を活用し、用語の一貫性を保ち、 Signposting を取り入れることは、論理的な文章を作成するテクニックの一環です。このブログでご紹介したテクニックを理解することが、より論理的で効果的な文章の作成や、よりレベルの高い翻訳文の作成にお役に立てば幸いです。
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