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Trados Studioエディタのちょっとしたヒント
Trados Studioは、RWS社の販売する翻訳支援ソフトウェアで、多くの翻訳会社で活用されています。筆者も、ほぼ毎日Trados Studioに触れていますが、日々の業務の中で、作業の効率化や品質向上に欠かせないと考えている機能がいくつかあります。いずれもシンプルな機能ではありますが、あるとないとでは大違いで、非常に助けられています。この記事では、そんな機能のうち、エディタ画面の操作に関するものをいくつかご紹介します。普段Trados Studioをお使いの方であればごく当たり前の知識でしょうが、初心者の方や、これから使用したいとお考えの方には、きっとお役に立てるのではないかと思います。
(なお、本記事は、Trados Studio 2019の操作性に基づいています。あらかじめご了承ください。)
目次[非表示]
- 1.ショートカットキー
- 2.フィルタ機能「すべてのコンテンツ」
- 3.ウィンドウのレイアウトを元に戻す
- 4.タグの表示設定
- 5.まとめ
- 6.川村インターナショナルのサービス
ショートカットキー
効率よく翻訳を進めるには、キーボード上で操作が完結するショートカットキーの利用が欠かせません。テキスト操作の基本的なショートカットキーであるCtrl+C(コピー)やCtrl+X(切り取り)、Ctrl+V(貼り付け)はもちろん使用できますが、それ以外にもTrados Studio固有のショートカットキーがあります。
筆者がよく使用するショートカットキーから、エディタ画面で特に重宝している3つの機能をご紹介します。
- 原文のコピー: Ctrl+Insert
分節にフォーカスがある状態でCtrl+Insertキーを押すと、原文を訳文にコピーすることができます。原文のまま残すべき分節が多くある場合、非常に便利です。
- メモリの取得: Ctrl+T
「翻訳結果」ウィンドウが開いている状態で、Ctrl+Tを押すと、メモリの現在選択されているエントリを現在の分節に適用することができます。
- 分節のロック/ロック解除: Ctrl+L
分節がロックされている場合、その分節にフォーカスがある状態でCtrl+Lを押すと、ロックが解除されます。逆に、ロックされていない分節はロックされます。ロックされている個所は通常は作業の対象外ですが、何らかの修正が必要な場合にロック状態を簡単に変更できるので便利です。
フィルタ機能「すべてのコンテンツ」
エディタ画面の「レビュー」タブには、フィルタ機能があります。さまざまな観点で分節をフィルタでき、用語の検索もできるので非常に便利なのですが、中でも知っておくと重宝するのが、「すべてのコンテンツ」項目です。
Trados Studioのエディタ画面には、通常、翻訳対象として取り込まれた分節のみが表示されていますが、原典には、翻訳対象とならない情報も存在します。たとえば数字のみのテキストやタグなどです(何を取り込むかについては、Tradosプロジェクトの設定に依存します)。もちろん、翻訳の対象でないから取り込まれていないのですが、まれに、取り込まれるべき情報が取り込まれていないことがあります。
分節の原文がどうも不完全に見えるのに、続くテキストが存在しないというご経験はないでしょうか。原文のエラーの可能性もありますが、原典には存在しているのに、文の末尾にある要素が何らかの理由で分節に取り込まれなかったということも考えられます。そんなときは、「すべてのコンテンツ」フィルタを使用すると、翻訳対象分節以外の要素もすべて表示されるため、問題の特定に役立つ場合があります。
たとえば、下記の赤枠で示した個所が、「すべてのコンテンツ」フィルタでのみ表示される、翻訳対象外の個所です。分節内には取り込まれていないタグが存在していることがわかります。
ウィンドウのレイアウトを元に戻す
筆者が業務中、あってよかったといつも感じているのが、「表示」メニューにある「ウィンドウのレイアウトを元に戻す」機能です。
翻訳に求められる要素は状況によって様々です。設定された用語集をこまめに検索したいときもあれば、メモリの多数の候補を見比べて最適な訳を検討したいときもあります。また、プレビューを確認しなければならない場合もあります。
こういったさまざまな要件に対応していると、徐々に、エディタ画面のレイアウトが崩れてしまうことがあります。メモリ検索のウィンドウの位置が微妙にずれてしまったり、表示が重なってしまったり。タイトなスケジュールで作業していると、些細なことでもストレスになりますし、うまく操作できないと焦ってしまいます。そんなときは、この「ウィンドウのレイアウトを元に戻す」をクリックします。どんなに配置が崩れていても、ワンクリックですべてのパーツが元の位置に収まります。シンプルな機能ですが、これがあることで、画面を必要に応じてカスタマイズしても安心できるので、非常に重宝しています。
タグの表示設定
タグが含まれる文章を翻訳する場合は、タグの表示設定を意識する必要があります。エディタ画面の「表示」タブの右端に、タグの表示を制御する機能があります。
紫のアイコンが3つ並んでいますが、下に行くほどタグに表示される情報が多くなります。
1つ目のアイコン(一番上)を選択した場合:
2つ目のアイコン(真ん中)を選択した場合:
3つ目のアイコン(一番下)を選択した場合:
翻訳の際には、もっとも詳細な情報が表示される3つ目のアイコンを選択しておき、タグの内容を把握しながら進めることが望ましいですが、一方で、タグが多いと可読性が低くなります。そのため、見直しの段階では、文章の流れやタイポなどを確認するために、1つ目のアイコンを選択して文そのものに集中することも有用です。
文章の内容や翻訳の段階に合わせて、タグの表示設定を切り替えながら作業されることをお勧めします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
いずれも、特に複雑な操作をする機能ではありませんが、頻繁に行う操作を簡略化しつつ、ウィンドウのレイアウトやタグの表示設定などを状況に応じて変更することは、日々の作業の効率と品質を高めることにつながります。
これまで使用したことのない機能があれば、ぜひ活用してみてください。そして、普段からTrados Studioに慣れ親しんでいる皆様には、この記事を通じて、各種機能を見直していただくきっかけになれば幸いです。
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