誇大広告に注意!マーケティング翻訳のポイント
マーケティング活動で広告やカタログで自社の製品・サービスの魅力を伝える際、誇大表現には注意が必要です。英日翻訳で出てきやすい過剰な表現と、その言い換えについて考えます。
マーケティング翻訳
企業のマーケティング・広報活動では、広告やカタログで自社の製品・サービスの良さを伝えて、できるだけ多くのお客様に使っていただきたい。そのために、胸に響くキャッチフレーズ、目を引く画像、見やすいレイアウトなど、あれこれと趣向を凝らします。
一方で、事実と異なる内容、誇張した表現、誤解を生じさせる言葉は避ける必要があります。商品やサービスの品質を実際よりも優れていると偽って宣伝する、あるいは競合他社の商品・サービスより優れているかのように偽って宣伝する、といった優良誤認表示に該当すると判断された場合、消費者庁より罰則が科されることがあります。
そんな「大げさな表現」を、翻訳によって生んでしまわないように注意しなければなりません。「辞書に載っている言葉だから大丈夫」という意識でいると、自社製品を原文のニュアンス(と実際の品質)以上に絶賛する広告文になってしまうことも。
また、そもそも原文の表現が「攻めすぎている」のなら、訳文で少しトーンを落としてあげるという工夫が求められる場合もあります。
今回は、翻訳で出てきやすい過剰な表現と、その言い換えについて考えていきます。
完璧、完全
何一つ欠点がない。足りないものがない。気軽に使える言葉ではありませんが、原文に「perfect」や「complete」と書いてあれば、そう訳してしまうこともあるかもしれませんね。だって、英和辞典に載っていますし…… 。
まずは、本来なら一番無難なケースから見ていきましょう。completeは、「別売りの商品をいろいろ買いそろえなくても、このセットに全部入っていますよ」といった文脈で使われることがあります。たとえば、「Our software provides the complete package with tools for editing, publishing, and sharing your work easily.」のような文です。 このcompleteは別に、「完全無欠の製品です!」と言っているわけではありません。原文の書き手の意図どおりに訳せば、「誇大広告と言われたらどうしよう…… 」と心配する必要がない場面です。逆に、「完全なパッケージセット」などと訳すのはまずいケース。ここでは「~ツール一式がそろった」という訳語を使えそうです。
次に、「たくさんの機能を備えた製品」や「さまざまな用途に対応可能」のようなニュアンスで使われるcompleteです。「This software offers a complete solution for both beginners and advanced users, featuring a wide range of tools that cater to different needs.」のような文脈ですね。 これには「包括的」などがしっくりくるかもしれません。
では、原文が「perfect solution」だったら?さすがにこれは、書き手が完璧な製品を意図していそうですね。それでも、日本語に翻訳する場合は、完全無欠という印象を与えるのは避けた方がよいので、もっと控えめな表現にしたい。 「〇〇に最適なソリューション」などでどうでしょうか。まだ褒めすぎと感じるかもしれませんが、「完璧」よりはトーンダウンできます。
業界最高
こちらは中々悩ましいフレーズ。英語のマーケティング文書では、「industry-leading」という表現がよく用いられます。industry=業界、leading=首位で、読んで字のごとく「その業界で一番」という意味で使われることもありますが、そのつもりで書かれていない場合もありますし、本当に一番だったとしても、客観的な裏付けとなるデータが添えられていないこともあります。
そのような場合は、「最高」や「一番」という表現は避けたいところ。そう書くと、「他のすべての企業より上」という印象を与えてしまいます。
よく目にする訳語は「業界をリードする〇〇」ですね。「リード」なら「最高」「一番」よりは少しニュアンスが和らぎます。「業界有数の〇〇」「業界でも指折りの〇〇」といった表現でも、業界No.1宣言を回避できそうです。「業界」がそこまで重要でない文脈なら、単に「優れた〇〇」にするのも良いかもしれません。
最大化、最小化
maximizeやminimizeなどの動詞。PCでソフトウェアを画面いっぱいに表示する、または一時的に非表示にする、という文脈なら、何も問題はないでしょう。安心して「最大化」「最小化」と訳せます。では、「運用効率を最大化できます」や「コストの最小化が可能です」という使い方はどうでしょうか。
「完璧」や「最高」と比べると、そこまで大げさな印象はないかもしれません。たとえば「コストの最小化」とは「コストをゼロにする」のではなく、「できるだけコストを抑える」という意味であり、「最小化」という表現でも多くの読み手がそのように受け取ってくれそうです。
とはいえ、やはり気になるのは「最」の一文字。できればこれを使わずに、近いニュアンスを表現したい。考えられる訳としては、「運用効率の大幅な向上」「コストを可能な限り抑制」などがあるかと思います。
まとめ
翻訳をしていて、原文に引っ張られてしまい、知らず知らず「ウチの製品が一番です!」と豪語するのは避けたいものです。最上級表現が出てきたときは、本当にそうなのか確認するのがいいでしょう。
英語の広告は、日本人からするとアピールが強いと感じるものが少なくありません。製品やサービスのすばらしさを伝えるのが広告の目的ですが、実際以上に優れているように見せるのは問題です。原文のニュアンスから多少離れたとしても、もっとマイルドな表現を使うことが求められる場合もあります。
個人的には、ある言葉を別の言葉で表現しなおすことが、翻訳の最大の醍醐味……もとい、非常に興味深い点だと思っています。
参考文献
JAROの広告 | JAROについて | JARO 公益社団法人 日本広告審査機構
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