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誤用?グレーな日本語との付き合い方 川村インターナショナルの翻訳ブログ

誤用?慣用?「グレーな」日本語との付き合い方

若者の言葉遣いに眉をひそめる大人は、きっといつの時代にもいるのでしょう。ある言葉が以前とは違う意味で使われるようになったり、別の言葉と結びついたりするのは、「日本語の乱れ」だという意見があります。


一方で、「言葉とは変化していくもの」という考え方もあります。実際に、かつて間違いとされていた使い方が国語審議会(現文化審議会国語分科会)で容認されたり、一般的に誤りと考えられていた意味が辞書に追加されたりしています。


では、そのように認められた言葉なら安心して使えるのかというと、そうとは言い切れないかもしれません。違和感を覚える人が大勢いる表現もあります。


今回は、言葉の使い方が「正しいか間違いか」ではなく、「意見が分かれる用法」の扱い方を考えていきたいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.敷居が高い
  2. 2.微妙
  3. 3.形容詞+です
  4. 4.まとめ
  5. 5.川村インターナショナルの翻訳サービス

敷居が高い

言葉の誤用を取り上げた記事やテレビ番組で、「役不足」「煮詰まる」「破天荒」などと並んでよく見かけるのが、「敷居が高い」です。


元々は、「後ろめたいことがあって、その人の家に行きづらい」という意味の言葉ですが、近年は「高級すぎたり上品すぎたりして入りにくい」という意味で使われることが増えており、これは誤用とされています。いえ、「誤用とされていました」と書くべきでしょうか。


広辞苑の第七版で、この「高級すぎて~」の意味が追加されたのです。


広辞苑といえば誰もが知る著名な国語辞典。その広辞苑に載ったということは、「高級~」も正しい意味ということなのでしょうか?これからは、高そうで入りにくい店があったときは、胸を張って堂々と「敷居が高い」と言えばいいのでしょうか?「その使い方は間違いだよ」と指摘する方が恥ずかしいのでしょうか?


先に述べたとおり、本稿は言葉の意味が正しいかどうかを論じる記事ではありません。正しいとする見方がある一方で、違和感を抱く人が少なからずいる言葉とどう向き合うか、それを考えるのが目的です。


読み手・聞き手に若い世代が多いなら、「敷居が高い」をこの新しい意味で使うのもよさそうです。そうでないなら、別の表現で言い換える方が無難かもしれません。「あの店は高そうで入りにくいね」の方が簡単で、誤解が生じないでしょう。


別の場面だと、以下のような言い換えもあると思います。

「カメラ初心者の私に一眼レフは敷居が高い」



「カメラ初心者の私に一眼レフはハードルが高い」



微妙

こちらも世代によって使い方が分かれそうな言葉です。

これまでは「どちらとも言えない」「少々」などの意味で使われていましたが、最近はある種の婉曲表現のような使い方もみられます。


母「今日のテストはどうだった?」

子「うーん、微妙・・・」



子どもが「良いとも悪いとも言えない」というつもりで「微妙」と答えたなら、その意図は誤解なく母に伝わるでしょうが、「はっきり言いたくないんだけど、良くなかったんだよね・・・」と思っていたのだとしたら、コミュニケーションの齟齬が生じるかもしれません。


テストの出来が悪かったことを母に伝える勇気があるかどうかはさておき、「思わしくない」「芳しくない」と答えたら、母が淡い期待を抱いてしまう事態は避けられるでしょう。


ここでは母と子の会話を例にしましたが、最近は親世代でも明言を避けたいときに「微妙」を使うようです。とはいえ、誤解のないコミュニケーションのためには、使い方に気をつけたい言葉ですね。


形容詞+です

  • 売上高の急激な増加は半導体への需要によるところが大きいです
  • 今後もさらに円安が進む可能性が高いです
  • 懸念材料の大半は織り込み済みなので、新興国市場の先行きは明るいです


筆者は個人的に、このような文には違和感があります。同意していただける方も多いのではないでしょうか。かくいう私も、普段の「会話」では、「あのお店、すごくおいしいです!」のような発言を平気でしているのですが・・・。やはり形容詞に「です」を付けた表現を文章で見ると、変だなと感じてしまいます。翻訳で見かけたときは変えたくなります。


ところが、この表現は国語審議会で昭和27年(1952年)に認められているのです!そんな昔に公的機関が認めていたわけですね。


繰り返しますが、ここで取り上げるのは正しいか否かではなく、違和感を持つ人が多い表現の扱い方。それに、国語審議会でも「平明・簡素な形として認めてよい」とされており、報道や企業の公式文書での使用もこれにあたるかというと、疑問符が付きます。


別の言い方を考えたいところですが、これがけっこう大変です。文の形を大きく変えなければならないことが多いです。・・・もとい、大幅な変更が必要になることがよくあります


売上高の急激な増加は半導体への需要によるところが大きいです



売上高が急激に増加した主な要因は、半導体への需要です。


今後もさらに円安が進む可能性が高いです



今後もさらに円安が進む可能性が高いと考えられます


懸念材料の大半は織り込み済みなので、新興国市場の先行きは明るいです



懸念材料の大半は織り込み済みなので、新興国市場には明るい展望が見えています


まとめ

「グレーな言葉」との付き合い方としては、やはり「距離を取る」のが無難だと思います。誤用だから使うべきではない、ということではなく、読み手に違和感を覚えさせないため、そしてミスコミュニケーションを避けるためです。

また、ある表現を別の表現に言い換える練習を積めば、言葉の引き出しを増やして、冗長な言い回しを避けることにもつながります。


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