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機械翻訳の落とし穴 川村インターナショナルの翻訳ブログ

機械翻訳の落とし穴~代名詞とジェンダーバイアス~

近年、「ジェンダー平等の実現」がSDGsの目標にあげられるなど、ますます男女平等に対する意識が高まっています。

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年の国連サミットで採択された2030年までに達成すべき国際目標のことです。
コーポレートサイトでは、川村インターナショナルが事業活動を通して行っている取り組みをご紹介しています。


日本でも小学生のランドセルの色から職業の名称に至るまでここ数十年で変化したことも多くあります。無意識のうちに性差や男女の役割について固定的な思い込みや偏見を持つことを指す「ジェンダーバイアス」という言葉も聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。

目次[非表示]

  1. 1.機械翻訳にはジェンダーバイアスは含まれない?
  2. 2.代名詞の翻訳
  3. 3.ジェンダーに気を付けたい言語
  4. 4.まとめ
  5. 5.川村インターナショナルの翻訳サービス

機械翻訳にはジェンダーバイアスは含まれない?

下記の記事に機械翻訳におけるジェンダーバイアスの問題が書かれています。

記事の中で、代名詞に男性女性の区別のないフィンランド語と英語の機械翻訳結果の例が挙げられていますが、日本語ではどうでしょうか?こちらの記事は2021年に書かれていますが、2022年現在では機械翻訳はこのジェンダーバイアスを避けることができるのでしょうか?


代名詞の翻訳

日本で「看護師」という名称が正式に男女に適用されるようになったのは2002年からで、それ以前は男性を「看護士」、女性を「看護婦」と呼び分けていました。これは日本だけではなく、世界でも以前は一般的に「看護師(nurse)」というと女性が連想されることが多かったようです。

機械翻訳は基本的に原文に忠実に訳を出力しますが、上で紹介した記事の中では、フィンランド語で英語のHe/sheを指す「Hän」を使うとdoctorを男性とみなしてHeと訳されています。

  • hän on lääkäri(フィンランド語)
  • He is a doctor(英語)

機械翻訳エンジンは大量のデータを読み込むことで学習させて精度を高めますが、そのデータがジェンダーバイアスを含んだものであれば、AIはそのデータの規則性をそのまま学習することになります。そのため、「医師=男性」、「看護師=女性」という情報が多く含まれた学習されたデータを学習した場合、上記のような結果が出力されます。


では、日本語ではどうでしょうか?

同じテキストをGoogle翻訳にかけると予想を超えて「彼女は医者です」と訳されました。


(2022/7月末現在)


「彼」、「彼女」のどちらを指すか明確ではないため、「彼女」とするのは誤訳の可能性があります。

さらにフィンランド語から英語に訳すと2通りの翻訳結果が得られました。

(2022/7月末現在)


原文により忠実な形の訳になっています。

この一文だけではこの「doctor」が実際に男性なのか女性なのかわかりませんが、前後の文章がある場合はそこから読み取って「Hän」の部分を原文に即して「彼」または「彼女」などに修正する必要があります。

ジェンダーに気を付けたい言語

機械翻訳を使用した際に同様の問題が起こりやすいのは、フィンランド語のように代名詞に性別を区別しない単語が使われる言語ですが、現在、他の言語でもジェンダーニュートラルな単語が使用されているケースがあるため注意が必要です。

スウェーデン語では、「hen」という代名詞がジェンダーニュートラルな単語として「hon(彼女)」や「han(彼)」の代わりに使用されるなど、他の言語でもこういったジェンダーニュートラルな単語が使用され始めています。また英語では、「he/she」の代わりに三人称単数の代名詞として「they」が使われるなど、同じ単語でも新たにジェンダーニュートラルな単語として使用されている単語もあります。

機械翻訳エンジンの学習データがこういったジェンダーニュートラルな単語に対応した訳が出力されているか、翻訳する文書に適した訳になっているかをきちんと確認する必要があります。


まとめ

現在、ヨーロッパの言語を中心にこういったジェンダーに配慮した単語や言い回しが増えています。国や地域、文化背景によってその傾向に違いはありますが、言葉はその話者の意識によって常に変化しているため、翻訳エンジン同様、時代の変化によって変わっていく言語に対応する必要があります。


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