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翻訳品質評価ガイドラインへ【特別対談】翻訳品質と標準化 ③


<目次>


はじめに

日本翻訳連盟(JTF)とJTFスタイルガイド

スタイルガイドから翻訳品質評価全体へ

実はあまり普及していない、海外発の品質評価フレームワーク

Garvinの5分類とPreference

翻訳業界のこれからについて


スタイルガイドから翻訳品質評価全体へ


森口  西野さんの開発したチェックツールというのは、翻訳したデータをブラウザにコピーして、スタイルが合っているかどうかを評価するWEBアプリケーションでしたよね。

ちょっと話は変わりますが、そもそもスタイルガイド委員会という組織がJTFの中に最初にできたのでしたっけ。


西野  スタイルガイド委員会は2017年から翻訳品質委員会という名称に変わりました。というのも、スタイルガイドを作った後、その後の活動について議論した時に、スタイルというのは翻訳品質の一要素であって、ほかにも用語など品質の要素はいくつかあるので、そのうちのスタイルだけを扱うのではなく、もうひとつ上のレベルで品質全体を扱うということになりました。この時に、名称が翻訳品質委員会に変わったわけです。


森口  現在はどういった活動がメインになっているのですか。


西野  翻訳品質評価ガイドラインというものを策定しています。


森口  それは、どういうものですか。スタイルガイドはあくまでも翻訳品質を左右する表記ルールなどをルール決めしたものですが、ガイドラインというのは「こういう評価をしたほうがいいですよ」という意味合いのものなのでしょうか。


西野  スタイルに加えて、「用語」、訳文の「正確さ」とか、「誤訳がない」とか、「流ちょうさ」、「文法的なミスがない」など、そういったものを、さまざまな視点から評価できるような方法を説明しているのが、翻訳品質評価ガイドラインですね。



ガイドラインは構成が大きく2つに分かれていて、前半は翻訳品質そのもの説明になっていて、後半はJTFが提唱する具体的な評価方法が記載されています。その具体的な方法の中には、エラーのカテゴリとして「正確さ」、「流ちょうさ」、「用語」、「スタイル」などが規定されています。


森口  エラー評価の指標のようなものですか。


西野  翻訳品質を評価する方法はいくつかあります。エラー評価は欧米で一般的に用いられている方法です。JTFが単独でまったく新しい方法を提唱しても受け入れられる可能性は低いので、すでに業界で世界的に存在するものと整合させつつ、作ることを目指していたので、そういった理由からエラー評価がベースになっています。


森口  以前にも、エラー評価は存在していましたよね。LISAという業界団体があって、ITのローカリゼーションの業界で結構浸透していたと思います。ダウンロードできるツールもあって、結構普及していたと思うのですが、その業界団体自体が現在なくなってしまいましたね。


西野  はい、LISA QA modelは、1995年頃にVer.1ができて、2011年にLISAが解散してしまったのでそのあと更新されていないのです。LISA QA modelは品質評価手法とソフトウェアが一体化したもので、そのソフトウェアを当時ダウンロードした人は、今も使っているかもしれません。


森口  LISAがなくなってしまった今、それに変わるものはあるのでしょうか。


西野  いくつか新しいものが提唱されていますね。たとえば、ヨーロッパのMQMとかDQF、といったものです。MQMは、もともと欧州委員会が資金を拠出して立ち上げられたプロジェクトです。


森口  どういう背景でそのプロジェクトが立ち上がったのですか。


西野  LISA QA modelに代わるものを、というのが一つ理由としてあげられると思います。

実は、LISA QA modelの手法にはちょっとした批判がありました。LISA QA model のエラー評価方法は、1文ずつ評価します。そこで見つかったエラーに対して点数を付け、カテゴリ分けをするという方法でした。

そのため、一つ目の批判は、1文ずつの評価では、文章全体として評価されていないということです。論文を例に挙げると、論文には論文なりの文章構成の方法があるわけですが、そこは評価されないことになります。



二つ目の問題はドキュメントタイプに応じた評価ができない、ということです。たとえば、広告と特許では重視するポイントが違うわけです。

広告だったら「流ちょうさ」かもしれないですし、特許だったら「正確さ」かもしれないわけです。そういう違いが画一的なエラーカテゴリではうまく評価できないという問題が指摘されていました。

MQMを作るときに、そういう批判をクリアするという動機があったかどうかは推測の域を超えませんが、二つの批判をクリアできるような内容にはなっています。MQMは、文レベルだけではなく文章レベルで評価しましょうという手法になっていますし、エラーのカテゴリを評価者の目線で自由に構成して使えるというようになっています。

たとえば、特許文書だけを評価するのだったら、流ちょうさは見ずに正確さと用語を重視して評価するなど、必要に応じて柔軟に組み替えられるようになっています。


④に続く

KIマーケティングチーム

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川村インターナショナルWebマーケティングチームです。開催予定セミナーやイベントの告知、ブログ運営などを担当しています。

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