インバウンド需要 ~訪日観光客のホンネと翻訳会社の役割~
インバウンドという言葉が流行語対象にノミネートされて、はや三年。
東京オリンピックを2年後に控え、海外からの訪日観光客は増加の一方をたどり、今年はいよいよ3000万人に届くと予想されています。
大規模な免税店が突如現れたり、外国人集客用のど派手な看板が立てられたりと、街中にも様々な変化が観られるようになりましたが、実際のところ、日本を訪れる外国人は「日本」に対してどのような感想を抱いているのでしょうか?
アジア各国の旅行者を対象に、アンケートを取ってみました。
安全できれい。静かで落ち着ける
ポジティブな意見で最も多かったのが、治安の良さ。確かに他のアジア諸国に比べると、だまされたり、ひったくりの被害にはあいにくかもしれませんね。
- 東京や大阪は世界有数の大都市であるにも関わらず、スリやひったくりにはもちろん、お店でぼったくられることもないから、安心して買い物を楽しめる
- コピー製品やニセモノがほとんど出回っていないから安心。同じものを買うなら日本で買いたい
- レストランやデパートに行くと、人が多いのにみんな静かで落ち着いている。マナーの良さに驚いた。
食べ物が美味しい
次いで回答が多かったのは「食べ物の美味しさ」です。
こればっかりは、個人の好みや各国の文化的背景によっても変わってくるため、一概には言えませんが、季節によって異なる「旬」の食材や、素材を活かした調理法は、多くの訪日観光客を魅了しているようです。もちろん「食の安全性」に対する信頼は世界でもトップクラスです。
- 日本の果物は素晴らしい
- 季節によって食べられるものが違うから、毎回新しい発見がある
- 生ものでも安心して食べられる
- 日本のコンビニは本当に便利。24時間なんでもそろうからついつい食べ過ぎてしまいます
Wi-Fi環境が不便
一方、ネガティブな意見で最も多かったのが、インターネット環境(Wi-Fi)の不整備による不便さです。ガイドブックや地図を片手に街歩き、、、も楽しいですが、ガイドブックも地図も今やスマホで利用するのが当たり前。
特に、右も左もわからない外国人旅行者にとって、地図アプリやコミュニケーションアプリが気軽に使えないのは、非常に不便なようです。
- 無料でWi-Fiが使える場所が少ない。
- Wi-Fiを提供してる場合でも、事前登録や日本の電話番号が必要になることが多く、結局使えない。
外国語(英語)での案内が少ない。わかりづらい
Wi-Fiの次に多かったのが、「外国語での案内の少なさ」に対する不満です。
最近でこそ、英語や中国語表記の看板やパンフレットも増えてきましたが、公共交通機関の情報や、飲食店のメニューなど、外国語での案内がまだまだ十分とは言えません。
特に、大都市の地下鉄網は同じ日本人にとっても、一見しただけでは理解が難しいものです。
外国からの訪日観光客にとっては、まさに「迷宮」です。
- 都心での移動はJRや地下鉄が便利らしいが、複雑すぎてわからない
- 大阪と梅田、同じ場所?それとも違う場所?とても難しい
- 外国語向けの案内は用意されているものの、そもそも読み方がわからない
- 駅員や係の人に質問しても、英語が話せない事が多く、インターネットも使えないため、右往左往してしまった
おもてなし≠ソリューション
治安の良さやマナーの質、そして四季折々の食べ物や観光名所、アクティビティ。
日本には旅行先としての観光資源が豊富に存在します。
しかしながら、その「観光資源(=コンテンツ)」を、観光客に届けるための「施策(=ソリューション)」が十分に提供されてないことから、日本旅行に満足していない観光客が増えているようです。
「おもてなし」の心も大切ですが、それだけでは十分に伝わりません。
重要な案内や伝達事項は、相手がわかる言葉で届け、そしてそれが届いたこと確認することが重要です。
訪日観光客向けの案内資料やサービスは、内容や機能はもちろん、用途や言語、そして活用方法(=その資料やサービスをどう使ってもらうか)までを十分に検討したうえで、制作・開発することが重要です。
「観光資源(=コンテンツ)」を観光客に正しくお届けする。それこそが「インバウンド需要」における翻訳会社の役割ではないでしょうか。
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