医薬品・医療機器 翻訳サービス:翻訳に必要な医学的知識 No.9 | 主な症状の解説②
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Ⅱ.疲労感(Fatigue)
疲労感(Fatigue)は患者さんがよく訴える症状のひとつで、来院患者の約20~30%が訴えるとされている。なんらかの疲労感は誰でも感じたことがある症状で、そのほとんどは休むだけで翌日にはなくなる。しかし、数日たってもよくならない疲労感(Persistence of Fatigue)は異常であり、内科的もしくは精神的疾患、例えば精神的ストレス、が関与している可能性も考える必要がある。
慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome: CFS)は、慢性疲労を訴える疾患のひとつで、6カ月以上続く、もしくは反復する原因不明の疲労感と定義され、休息しても改善せず、患者さんは無気力となり、それまでできた仕事(任務)は遂行不能となる。
この病名は19世紀頃から軍隊で主に用いられた診断名で、”Soldier’s Heart Syndrome”、”Neurasthenia 神経衰弱”、 最近では ”Gulf War Syndrome(1991)” とも呼ばれている。わが国でも、仕事上のストレスや人間関係が原因で、程度の差はあれ、似た症状を訴える患者さんは多く、労災として認めるかどうかが問題となることもある。昔のように三世代が同居し、育児も分担できた頃と違って、現在の日本のように、核家族化が進み、育児経験がない母親が、仕事と育児の両方を分担せざるえないわが国の現状では、育児ストレスが慢性疲労の原因となる場合も多い。
本人の訴えが診断根拠のほとんどを占める慢性疲労症候群は、客観的診断基準がないため、かなり恣意的に診断される危険があり、診断がついても、休ませる以外、これといった治療法はない。しかし、わが国ではないが、慢性疲労症候群として処理された湾岸戦争帰還兵の中には、劣化ウランや神経ガスに暴露した人たちもいる可能性があり、今後、アメリカでは、より深刻な社会問題へ発展する可能性がある。
1. 慢性疲労の病因(Etiology)と鑑別診断(Differential Diagnosis)
疲労を主訴とする患者さんのほとんどは、身体的には異常はないが、なんらかの基礎疾患が隠れて存在する場合がある。
以下、その鑑別診断を列挙する。
精神疾患(Psychological Disease)
- うつ病(Depression)
- 不安神経症(Anxiety Syndrome)
- 薬物依存症(Substance Abuse)
血液疾患(Hematologic Disease)
- 貧血(Anemia)
- 白血病(Leukemia)
- 悪性リンパ腫(Malignant Lymphoma)など
心疾患(Cardiac Disease)
- 心不全(Heart Failure)
- 心筋症(Cardiomyopathy)など
内分泌疾患(Endocrine Disease)
- 副腎皮質不全(Addison's Disease)
- 糖尿病(Diabetes mellitus)
- 甲状腺疾患(Thyroid Disease)
- クッシング症候群(Cushing Syndrome)
- 副甲状腺機能亢進症(Hyperpara-thyroidism)
- 下垂体機能低下症(Hypopituitarism)など
消化器疾患(Gastrointestinal Disease)
- 炎症性胃腸炎(Inflammatory Bowel Disease)
- クローン病(Crohn's Disease)
- 潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)
- 吸収不良症候群(Malabsorption Syndrome)など
感染性疾患(Infectious Disease)
- 結核(Tuberculosis)
- 心内膜炎(Endocarditis)
- ヒト免疫不全ウイルス (HIV) など
腫瘍性疾患(Oncologic Disease)
- 悪性腫瘍(肺がん、胃がん、肝がん、腎がん、など)
薬物副作用もしくはその濫用による慢性疲労
- 抗うつ薬(Antidepressant)
- 抗ヒスタミン薬(Antihistamines)
- 麻薬(Narcotics)
- 睡眠薬(Hypnotics)など
呼吸器疾患(Pulmonary Disease)
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea)
- 間質性肺炎(Interstitial Pneumonitis)
- 慢性呼吸不全(Chronic Respiratory Failure)など
膠原病(Collagen Disease)
- 全身性紅斑性狼瘡(SLE)
- ライム病(Lyme Disease)
- 強皮症(Sclerodermia)
- リュウマチ様関節炎(Rheumatoid Arthritis)など
2. 疲労を訴える患者で注意すべき症状
著明な体重減(Significant Weight Loss)
- 数㎏以上の原因不明の体重減少
夜間盗汗(night sweat)
発熱(fever)
などを同時に訴える場合は、結核などの感染症や悪性リンパ腫、腎臓がんなどの悪性腫瘍、膠原病などを疑う必要がある。
一般に、訴えが多彩な症例(例えば、頭痛、胸痛、腹痛、しびれなどを同時に訴える症例)は、不安神経症など精神的な疾患(Functional disease)の可能性が高く、器質的疾患(Organic disease)は通常、除外(rule out)してよい。
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