医薬品・医療機器 翻訳サービス:翻訳に必要な医学的知識 No.6 | 結核の治療 ②
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結核の治療②
昭和20年(1945)から30年(1955)頃まで、結核治療の中心は安静療法だった。
食糧事情も悪く、貧しかった戦後の日本では、「ゴロリと寝るのにカネはかからぬ」安静療法(大渡順二:結核療養のコツ 回復者は教える 保健同人社 1953)は、国が推進できる唯一の治療法だった。
戦中、戦後を通じ、補助的治療法として人工気胸療法も盛んに併用されたが、昭和25年頃からは胸郭形成術(Thoracoplasty)や肺区域切除(Segmental Resection)などの外科的治療(Surgical Treatment)が新たに加わり、結核治療の主流となった。
昭和25年から40年頃までの15年間は外科的治療の全盛期で、一人前の結核医として認められるために、外科に転向した内科医も多かった。
一般的に、病気の治療は、1) 積極的治療 (Aggressive Treatment)と、2) 保存的(消極的)治療(Conservative Treatment)に大別できる。 感染症の場合、病原体に直接作用する治療は積極的治療であり、病原体にとっての環境を悪くし、その増殖を抑える、もしくは患者の抵抗力を上げる治療は消極的治療である。
感染症(Infectious Disease)は、
- 病原体(Causative Organism)の同定
- その病原体に効く抗菌剤の開発
の2条件が満たされてはじめて積極的治療が可能となる。
結核の場合、病原体である結核菌の発見は1892年 (Robert Koch)、最初の抗結核剤(ストレプトマイシンとパス(PAS Para-amino Salicylic Acid)が開発されたのは1945年頃である。したがって、1945年以前の結核治療は総て、経験に基づく保存的治療(Empirical Treatment)だった。
1.安静療法(Bed Rest Therapy)
安静療法は、長年の経験から生まれた保存的治療法の典型で、安静だけで回復したひとも実際に多くいた(島村喜久治 死を追い抜く日 保健同人社 昭和28年)。投獄拘禁が結果的に安静療法となり、結核が改善したという闘病記もある。
しかし、安静がなぜ有効かについては、当時、十分には説明できなかった。現在は、結核菌が好気性菌(Aerobic Bacteria:増殖に酸素を必要とする菌)とわかっているので、安静療法が有効であった主な理由は、安静にして肺が動かない状態に保てば、病巣部への換気が減少し、酸素補給が低下、その結果、結核菌の増殖か抑制されるため、と理解できる。
戦前から戦中にかけ、肺結核の経過観察中、空洞の新たな出現は、死刑宣告に近かったが、その理由は、空洞ができると酸素補給が増え、結核菌増殖が爆発的に加速され、病状が急速に進行、死に至ることが多かったことによる。
安静度の遵守基準は次第に緩やかとはなったが、外科的治療が主流となった後も、安静療法は結核治療の基本とみなされ、結核病棟で「安静時間」の表示が完全になくなったのは昭和40~50年以降である。
2.外科的治療(Surgical Treatment)
- 人工気胸(Artificial Pneumothorax)
- 胸郭形成術(Thoracoplasty)
- 横隔膜神経麻痺術(Phrenic Nerve Paralysis)
- 胸郭充填術(Plombage):空気の代わりに異物を胸郭内に充填して肺の動きを抑制
-
切除療法(Resectional Therapy)
① 区域切除(Segmental Resetion)
➁ 肺葉切除(Lobectomy)
③ 一側肺切除(Pneumectomy)
5)の切除療法を除き、1)~4)は虚脱療法の範疇に入る治療法で、病巣部の動きを極力抑え、同部位への換気を最低限に留めることにより、酸素補給を絶ち、結核菌増殖の抑制を意図したものであり、その根拠は安静療法と基本的には同じと考えてよい。
切除療法は患部の除去もしくは縮小を目的とした治療法で、既に過去の治療法とはなったが、現在でも多剤耐性結核などで時々用いられている。
実際の臨床では、安静療法を含め、上述の治療法を適当に組み合わせて用いた。
―以下次回に続く―
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