英日翻訳における「誤訳を招きやすい単語たち」パート3
川村インターナショナルで社内翻訳者として勤務している筆者は、業務上、ほかの翻訳者の方の訳文をチェックする機会が多くあります。そして、いろいろな方の訳文に触れていると、誤訳しやすい単語やフレーズというものが見えてきます。実際の訳文でよく目にする誤訳を紹介して、誤訳を少しでもなくしていこう!という本ブログシリーズ。今回は第3弾をお届けします。第1弾はこちら、第2弾はこちらからどうぞ。
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Day 1
今回取り上げるのは「Day 1」。「初日」や「1日目」を意味する言葉で、何かのプロセスの「最初の日」を表す場合に使われることが多いです。一般的なDay 1の用法は次のとおり。
新しい仕事の初日は緊張した。 ・Today is Day 1 of my 7-day training challenge. 今日は、7日間トレーニングの1日目です。 |
パッと見、誤訳とは無縁そうなDay 1ですが、実は、文脈によって意味がコロコロ変わる厄介者だったりします。以下に、筆者が実際の案件で遭遇したケースをご紹介します。いずれもITの文脈ですが、同じDay 1でも意味はまったく異なります。
「リリース日」を意味する場合
ITやゲームの文脈では、製品やゲームタイトルの発売日をDay 1と表すことがよくあります。
・Day 1 is almost here! Pre-order the new software now and get 20% off! リリース日はもうすぐ!いま新しいソフトウェアを予約すると、20%オフになります! ・This highly-anticipated video game has finally reached Day1 after multiple delays. 多くの人が待ち望んだこのテレビゲームは、何度も延期されたのち、ついにリリース日を迎えた。 |
英語でももちろん“the release day”という言い方はありますが、Day 1とすると「待ちに待った製品がついに発売される」というワクワク感が含まれているそうです。「リリース日」の意味のDay 1は比較的よく見かけるので、なじみのある方も多いかもしれません。
ソフトウェアの「最初のバージョン」を意味する場合
次はちょっと誤訳されがちなケースを紹介します。IT関連の文脈では、正式にリリースされたソフトウェアの最初のバージョンのことをDay 1という場合もあります。
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上記のように “The Day 1 version”と書かれていると、初回バージョンを指していることが分かりやすいのですが、筆者が実務で遭遇したケースでは、次のようにDay 1としか書かれていないパターンもありました。
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仮にこの例文を「新しいソフトウェアは素晴らしいが、初日(あるいはリリース日)なので、機能にはいくつかの制限がある」と訳してみましょう。そうすると、裏を返せば「2日目以降は機能の制限がなくなる」という意味にとれます。これは少し変ですよね。ソフトウェアの場合、次のバージョンアップまで機能制限は残るはずです。そう考えると、この文脈では「初回バージョン」と訳出するのが正解と導き出せます。
ソフトウェアの「開発段階」を意味する場合
また、少しトリッキーなケースとして、ソフトウェアの「開発段階」を意味するパターンもあります。ソフトウェアのライフサイクルを表す用語で、Day 0、Day 2と共に、operationを伴って(伴わない場合もあります)、下記の様な意味になります。
- Day 0 operation – 設計段階
- Day 1 operation – 開発段階
- Day 2 operation – 運用段階
大きなバグは開発段階ですべて修正しなければならない。 |
「リリース日」や「初回バージョン」は文脈から意味を導き出せそうですが、この場合はもはや「開発段階」という意味になる、という知識がないとおそらく正解にはたどり着けないのではないでしょうか…。
まとめ
同じ分野でも文脈によって意味が変わるDay 1の例として、3パターンご紹介しました。もちろん上記の3つ以外にも別の意味を持つ可能性も大いにありますし、ほかの分野ではまったく違う意味になることも考えられます。Day 1に遭遇したら、安易に「初日」という意味で考えるのではなく、「いろいろな意味になりうる」ということを念頭に、文脈をしっかりと読み込むようにしましょう。
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