ネイティブでも迷う?英語のコンマの解釈(前編)
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シリアルコンマ(Serial comma)とは
シリアルコンマ(Serial comma)をご存知ですか。英語で、3つ以上のものを列挙する際に、最後の項目の前に置かれるandまたはorの前に打つコンマのことです。
オックスフォードコンマとも呼ばれ、オックスフォードの名を冠するのは、オックスフォード大学出版局のスタイルガイド*でその使用を求められていることに由来します。(同様の理由でハーバードコンマとも呼ばれています)
*スタイルガイド:文章上の表現や表記に関するルールをまとめた文書
シリアルコンマの使用法
シリアルコンマの使用は、文法的に強制されるものではありません。出版社や学術誌のスタイルガイドなどは、使用に関しての規定を含むものが多いのですが、前述のオックスフォード大学出版局などのようにその使用を指定している文書スタイルもあれば、逆に使用を推奨しないスタイルもあります。
使用してもしなくても良いような些細な違いなら、特に気にすることもないように思えるかもしれません。ところが、時と場合によっては、シリアルコンマの有無は文の意味に決定的な影響を及ぼします。
まず、シリアルコンマの有無が文の意味に何らの影響も及ぼさないケースを見てましよう。
1a) I had eggs, sausages, and baked beans for breakfast. |
上記のどちらの文も、特に何の問題もなく「たまごとソーセージと煮豆を朝食に食べた」と解釈することができると思います。
ところが、シリアルコンマがないために、文章の意味が曖昧になってしまうケースもあります。
(以下、解釈の余地が生じている例文には、文末にアスタリスクを付けてあります)
2a) I invited my parents, Peter, and Mary. |
シリアルコンマを持つ2aの文では、「私の両親とPeterとMaryを招待した」ということで、招待されたのは、私の両親、Peter、そしてMaryの4人であることが明確にわかります。
それでは、この文からシリアルコンマを取り除いた2bの文ではどうでしょうか。両親を招待した、というところまでは明確です。PeterとMaryについてはどうでしょうか。2aと同じく、両親の他にその2人を招待した、という意味にとることもできます。しかし、Peterの後ろにシリアルコンマを持たないこの文では、「Peter and Mary」は、それに先行するmy parentsの説明あるいは言い換えと解釈することも可能です。この場合、この文の意味は「私の両親であるPeterとMaryを招待した」と別のものになってしまいます。前後の文脈があれば、どちらの意味なのか容易に判断することができるかもしれません。しかし、シリアルコンマのないこの文単独では、どちらの解釈が正しいのかを決定的に判断することができません。招待されたのは4人かもしれないし、2人かもしれないのです。
ここまで読むと、もしシリアルコンマがあることで曖昧性を回避して文の意味を明確にできるのであれば、常にそれを使うように心がければ良いのでは、と思うかもしれません。しかしシリアルコンマが厄介なのは、まさにそれがあるばかりに意味が曖昧になってしまうという逆のケースもあるからなのです。
3a) I invited my mother, Mary, and Suzie.* |
シリアルコンマのある3aの文は、2bの文と同じような理由から、Maryを母親の名前と解釈して、「私の母であるMaryとSuzieを招待した」という意味にもとることができます。2bの場合と同様に、3aの文単独では意味を決定的に判断することができません。
これに対して、3bの文にはシリアルコンマがありませんが、2bの場合とは反対に、ここではその意味を「母とMaryとSuzieを招待した」とすんなりと理解することができます。2bの文と異なり、motherが単数形であるため、MaryとSuzieの2人がその語の説明や言い換えであることは文法的にあり得ないからです。(もし、様々な特殊事情から2人ともが母親である場合、それを意味する英文は、「I invited my mothers, Mary and Suzie.」でなければなりません。もちろん、この文は2bと同様の曖昧性を含むものです。)このように、同じような構成を持つ、2と3の例文ですが、シリアルコンマの有無が、文の意味にまったく逆の影響を及ぼしているのがおわかりいただけるでしょうか。
まとめ
たった1つシリアルコンマがあるだけで、文章の解釈が変わってしまう可能性があります。それでは、このような状況に陥ることを避けるためには、どうすればよいでしょうか。次回の記事では、シリアルコンマによって生じる曖昧さの解決法についてお話したいと思います。
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