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有名な誤訳の事例から対策を考える 川村インターナショナルの翻訳ブログ

ロスト・イン・トランスレーション:有名な誤訳の事例から対策を考える

言語は人と文化をつなぐ強力なツールです。言葉を使うことで私たちは自分の考えを表現し、知識を共有し、国境を越えてコミュニケーションを取ることができます。しかし、ひとつの言語を別の言語に翻訳することは、想像以上に難しいことでもあります。

自動翻訳ツールや生成AIなど、言葉を扱う技術が身近になった今、あらためて「誤訳」(翻訳の誤り)や言葉の誤解釈について見直すことは、より適切で豊かなコミュニケーションにつながります。今回は、近年起こった有名な誤訳と誤解釈の事例をご紹介し、翻訳会社という立場から、その防止策について考えてみたいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.キャンペーンスローガンの誤訳
  2. 2.災害を祝ってしまったSNSアルゴリズムの誤解釈
  3. 3.まとめ



キャンペーンスローガンの誤訳

文化的なニュアンスと言語は、国際マーケティングにおいて重要な役割を果たします。ある大手飲料メーカーが1960年代に新たな海外市場に参入しました。同社は当時のキャンペーンで、「このドリンクを飲んで生き返ろう」というニュアンスのスローガンを使用していたのですが、これを現地語に翻訳する際に直訳した結果、「このドリンクは先祖を死から蘇らせる」との意味に訳されてしまったのです。

スローガンやキャッチコピーは翻訳する際に特に注意が必要で、翻訳者には深い文化的理解、優れた表現力や高い専門性が求められます。直訳してしまったことで、海外でのブランドのイメージに大きな影響を与える結果になってしまいました。

参照:China's Golden Week - A Good Time To Make Sure You Don't 'Bite The Wax Tadpole'

マーケティング分野の翻訳では、言葉の直接的な意味を訳すだけではなく、その文章が使用される目的や受け手の背景なども考慮して訳文を作成することが重要になります。

弊社では、特にマーケティング関連文書の翻訳時には、 原文と訳文の比較による通常のチェック(バイリンガルチェック)に加えて、翻訳先言語を母国語とするプロフェッショナルが訳文のみに目を通して自然な表現に仕上げる工程(訳文推敲チェック)を追加するなどして品質を確保しています。

同様に、医療や法律、ITなど専門知識が求められる分野については、専門家によるチェックの工程を設ける場合もあります。


災害を祝ってしまったSNSアルゴリズムの誤解釈

次にご紹介するのは、いわゆる「翻訳」の誤りではありませんが、言葉の誤解釈にまつわる事例です。

ソーシャルメディアやSNSは、災害の発生時に人々の安否や近況を共有する大切な手段のひとつとなりました。これは世界的な傾向で、以前にある国で大きな地震が発生した際、多くの人々が大手SNSに自身や家族の安全を知らせるメッセージを投稿しました。ところが、その際、多くのメッセージに、本来はお祝い事の時に使われるべき風船と紙吹雪のアニメーションが自動的に表示されてしまいました。

この原因となったのが、メッセージに使われた現地の言葉です。この言葉が「生き残る」「安全である」との意味に加えて、「おめでとう」という意味も持っていたため、アルゴリズムが文脈を理解できず、意図しないお祝いのアニメーションが表示される結果となってしまいました。「おめでとう」というメッセージに対して自動的にお祝いのアニメーションを表示する機能は各言語で提供されていますが、この国では当分停止されたということです。

参照:BAD BOT Facebook ‘regrets’ Indonesia earthquake balloons gaffe that saw festive animations added to quake messages

この事例はアルゴリズムが複数の意味を持つ言葉を誤って解釈してしまったという問題ですが、多義語(複数の異なる意味を持つ単語)や同形異義語(綴りが同じで意味が異なる単語)の解釈が弱点となるのは、近年広く使用されるようになった機械翻訳(AI翻訳)技術にも当てはまります。

弊社では機械翻訳を扱う際に、こうした単語については、人が機械翻訳の出力を見直す工程(ポストエディット)で文脈に照らして確認しています。また、機械翻訳にかける前に元の文章を編集する(プリエディット)ことで、訳文の精度を向上させることもできます。

例えば、あらかじめ多義語を別のわかりやすい言葉に置き換えたり、日本語から翻訳する場合であれば、複数の意味にとれるひらがなの言葉を漢字に変換しておいたりすると、AIによる誤解釈を防ぐことができ、適切な訳文が作成されやすくなります。このように、各言語の特徴とAIの弱点を把握しておくと、機械翻訳をより効率的に活用することができます。


まとめ

ご紹介した2つの事例は、「言葉を解釈して別の言語に翻訳する」という、一見シンプルですが高度な技術に内在する複雑さを思い出させるものです。

言語は人間のコミュニケーションにとって欠かすことのできない大切なものですが、誤解の原因にもなりえます。誤訳は、マーケティングの失敗や法的紛争、さらには国際的な紛争を招くような結果さえ引き起こすことがあります。機械翻訳やAI技術が大きく発展したとしても、人がそれを適切に活用できなければ、リスクが消えることはありません。

グローバリゼーションが加速する中、言語の壁を越えた正確なコミュニケーションが必要とされる場で、経験を積んだプロの翻訳者は無くてはならない役割を果たしています。

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