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分野別定義と使用法について 川村インターナショナルの翻訳ブログ

accuracyとprecisionは何が違う?分野別定義と使用法

accuracyprecisionという2つの単語は、「正確さ」や「精度」といった意味があり、日常的には区別せず使用されています。しかしこれらは、科学技術分野で使用される場合は明確に区別して定義されていることがあります。そのため、記述の意図する意味を正しく理解するには、その区別を知る必要がありますし、翻訳する時には正しい訳語を選ぶ必要があります。

ここでは、accuracyとprecisionの定義と使用法について、いくつかの分野で使われる場合の定義を引用しながら説明します。

目次[非表示]

  1. 1.分析・測定
  2. 2.機械学習
  3. 3.まとめ
  4. 4.川村インターナショナルの翻訳サービス

分析・測定

分析、測定において、「accuracy(正確性、または真度)」は、分析結果や測定値が、実際の姿や真の値にどの程度近いかを示します。一方、「precision(精密度、または精度)」は、複数回の分析結果や測定値の間にどの程度バラつきがなく、互いに近いかを示します。accuracy(正確性)とprecision(精密度)は互いに独立した性質です。

これらはダーツボードの図で説明されることがあります。

出典:EXPLORING OUR FLUID EARTH Teaching Science as Inquiry


ダーツボードの中心(ブルズアイ)を真の値だと考えてください。

ダーツがブルズアイに近ければ近いほど、投げ方(分析結果や測定値)にはaccuracy(正確性)があります。一方、当たったダーツ同士が近ければ近いほど、投げ方にはprecision(精密度)があります。

ダーツがブルズアイに近くもなく、互いに近くもなければ、投げ方にはaccuracy(正確性)もprecision(精密度)もありません(図A)

すべてのダーツが非常に近い位置にあるにもかかわらず、ブルズアイから遠く離れている場合、precision(精密度)はありますが、accuracy(正確性)はありません(図B)

ダーツがすべてブルズアイからほぼ同じ距離にあり、ブルズアイの周りに等間隔で配置されている場合、ダーツの平均はブルズアイの中にあります。すなわち数回の投げ方の平均値が真の値に近い位置にあります。これは、accuracy(正確性)はあるが、precision(精密度)はない投げ方を表しています(図C)

ダーツがブルズアイに近く、かつ互いに近い場合は、accuracy(正確性)とprecision(精密度)の両方を兼ね備えています(図D)

測定や分析の場合、同じもの(例:あるものの長さ)や均質なもの(例:均質に溶解した溶液)を繰り返し測定・分析した時、結果のバラつきが小さい場合をprecision(精密度)が高い(またはrepeatability[再現性]が高い)と表現します。

一方、precision(精密度)が高くても真の値に近いとは限りません。結果に再現性があっても、真値からはズレていることがあります。繰り返し測定・分析した時の平均値が真値に近い場合を、accuracy(正確性)が高いと表現します。


機械学習

機械学習モデルの成果を分類する時の評価指標では、accuracy(正解率)はモデルの全予測の中の正しい予測の割合、Precision(適合率)はモデルが正しいと予測した中で実際に正しかった割合を意味します。

これは混同行列(正事例と負事例)を使って以下のように説明されています。



Accuracy(正解率) = (TP + TN) / (TP + TN + FP + FN)
 
Precision(適合率) = TP / (TP + FP)
 
TP:True Positive(真陽性)
 
TN:True Negative(真陰性)
 
FP:False Positive(偽陽性)
 
FN:False Negative(偽陰性)



出典:令和2年度 経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業 製品安全分野におけるデータ利活用調査


​​​​​​​例えば、機械学習モデルが、あるものの作成者を「ヒト」と「AI」の2つのクラスに分類して予想する場合を考えます。混同行列は、実際のラベルと予測結果の関係を示す行列であり、以下のように表されます。


実際:ヒト

実際:AI

 予測:ヒト

100
30

 予測:AI

20
50


この場合、正解率(Accuracy)は、全体に対して正しく分類できた割合であり、上記の例では、正解率は (100+50)/(100+20+30+50)=70% となります。

また適合率(Precision)は、ヒトを判別対象とした場合、予測した「ヒト」というクラスが実際に「ヒト」であった割合であり、上記の例では、適合率は 100/(100+30)=77% となります。

実際には、機械学習の評価指標には正解率、適合率のほか、再現率、F値などの指標もありますが、それらは専門家の説明に譲り、ここでは割愛します。



まとめ

今回はaccuracyprecisionという、2つの英単語の意味の違いを紹介しました。どちらも普段はそこまで区分けしていない単語かもしれませんが、専門的な内容を「正確に」理解するには、こういった用語の使い分けを知っておく必要があります。


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