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英語とフランス語が似ている理由 ノルマン・コンクエスト 川村インターナショナルの翻訳ブログ

英語とフランス語が似ている理由 ノルマン・コンクエスト


目次[非表示]

  1. 1.英語とフランス語の関係
  2. 2.ノルマン・コンクエスト
  3. 3.借用語
  4. 4.ハイブリッドワード
  5. 5.まとめ
  6. 6.参考文献
  7. 7.川村インターナショナルの翻訳サービス


英語とフランス語の関係

英語とフランス語、似ている単語があるなと思ったことはありませんか。

英語とフランス語は同じインド・ヨーロッパ語族※に属する言語ですが、そのインド・ヨーロッパ語族を更に細かく分類すると、所属する下位のグループが異なります。英語は、ゲルマン語派に所属し、ドイツ語・ノルウェー語・オランダ語などの仲間です。一方、フランス語はイタリック語派に属し、その仲間にはイタリア語・スペイン語・ラテン語などがあります。そのため、英語とフランス語は、遠い親戚関係にあたるといえます。では、なぜその遠い親戚関係にあたる言語に類似する単語が多くあるのでしょうか。

※語族:比較言語学の用語で、共通の祖先から分化したと想定される言語のグループを指す



ノルマン・コンクエスト

英語とフランス語に類似する単語が多い理由は、ノルマン・コンクエストという、11世紀に起こった歴史上の出来事が大きく関わっています。

当時のイングランドの王様、エドワード王が後継者を指名せずに亡くなり、エドワード王の義弟にあたるハロルドが王位を継承することになりました。それに対してエドワード王の遠縁にあたるウィリアム1世が疑問を呈し、1066年、ノルマンディ公国(現在の北フランス)からウィリアム1世がイングランドに攻め込み、征服しました。これをノルマン・コンクエストといいます。

この征服により、大勢のノルマン人がイングランドに流れ込み、イングランド社会の重要な地位をノルマン人が独占しました。このため、政治・裁判・教会などの公的な場ではノルマン人が用いていたフランス語(正確には現代フランス語の祖先とされるアングロ=ノルマン語)が主流となりました。公的な場ではフランス語が使用されることになったイングランドですが、もともとイングランドに住んでいた市民は変わらず英語(正確には古英語)を話し、王族や上流階級の人々はフランス語を話す形となりました。

そのため、フランス語からの借用語や、英語とフランス語を掛け合わせたハイブリッドワード、また単語のつづりにおいても、大きな影響を与えることとなりました。しかしながら、当時パリで話されていたフランス語のアクセントが他のフランスの地域に大きな影響を与え、ノルマンディ公国で話されていたフランス語は時代遅れと考えられるようになったことなど、様々な要因から英語がまた力を持つことになりましたが、フランス語が英語に与えた影響はとても大きなものでした。では、次の章でフランス語が英語にもたらした、借用語と、ハイブリッドワードについて、いくつかご紹介します。


参考:ノルマン・コンクエストとは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp)
      ノルマン=コンクェスト/ノルマン征服 (y-history.net)



借用語

庶民は英語、上流階級はフランス語を話すといった二重言語社会が続いた影響で、英語にフランス語から借用した言葉が大量に入り込みました。その数は約1万語と言われており、そのうちの多くが現在でも使用されていて、ご存じのものも多いかと思います。下記に例を挙げます。



日本語


英語

フランス語

政治関係
議会

Council

Conseil

政府

Government

Gouvernement

議会、下院

Parliament

Parlement

国家、国民

Nation

Nation

人々

People

Peuple

国、国家

State

Etat



動物(食べ物)
豚肉

Pork

Porc

牛肉

Beef

Bœuf

羊肉

Mutton

Mouton

裁判 / 法関係
犯罪

Crime

Crime

裁判官

Judge

Juge

刑務所

Prison

Prison

罰する

Punish

Punir

ファッション / 芸術


衣装

Costume

Costume 

美しさ

Beauty

Beauté

美術

Art

Art

Poem

Poème

宗教関係
大修道院

Abbey

Abbaye

祈り

Pray

Prier

宗教

Religion

Religion

聖人

Saint

Saint

※つづりが一緒であっても、発音が異なるケースが大部分です。

ハイブリッドワード

借用語とは異なり、フランス語の言幹に英語の接頭語・接尾語が合わさることでできた、英語とフランス語のハイブリッドワードも誕生しました。

(例)

① Beautiful → Beauty(仏)+ Ful(英)
② Faithless → Faith(仏)+ Less(英)
③ Ungracious → Un (英) + Gracious(仏)


まとめ

ノルマン・コンクエストは、歴史上の出来事としてご存じだった方もいるかと思います。単にノルマン人がイングランドを征服したというだけでなく、視点を変えて出来事を見ると、知っていたはずの歴史上の出来事も、また違った風に見えてくるのではないでしょうか。このように、言語を歴史の観点から見る機会は少ないと思いますが、その言語が持つ歴史や背景を知ることで言語学習がより楽しくなるきっかけになれば幸いです。


参考文献

Charles Barber, Joan C. Beal, Philip A Shaw, The English Language A Historical Introduction Second Edition, Cambridge University Press, 2009


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