インドの驚きにあふれた言語事情
インドって何語が話されているのだろう。イギリス領だったから、英語は通じそう。でも「ナマステ」も聞いたことあるな、ヒンディー語かな?
上記は渡印前の筆者が、インドの言語について持ち合わせていたわずかな情報です。しかし予想に反して、インドは驚きにあふれた複雑な言語事情を持つ国でした。
Incredible India! そんなインドの言語についてご紹介します。
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インドの公用語はいくつ?
インド憲法第343条ではインドの公用語は「ヒンディー語」と定められています。しかし、インドの人口13.8億人に対してヒンディー語の話者数は約5億人です。では残りのインド人は何語を話しているのでしょうか。
インドでは現在約461の言語が使用されています。その中の121の言語に1万人以上の話者がおり、そのうちの22言語(ヒンディー語含む)が先ほどのインド憲法で正式に認知されています。下記が22言語の一覧で、その多くが州の公用語として使用されています。
アッサム語 |
マニプル語 |
ベンガル語 |
マラーティー語 |
ボド語 |
ネパール語 |
ドーグリー語 |
オリヤー語 |
グジャラート語 |
パンジャーブ語 |
ヒンディー語 |
サンスクリット語 |
カンナダ語 |
サンタル語 |
カシミール語 |
シンド語 |
コンカニ語 |
タミル語 |
マイティリー語 |
テルグ語 |
マラヤ―ラム語 |
ウルドゥー語 |
英語は準公用語として広く用いられていますが、話さない人ももちろん多くいます。国の規模が違うと、話されている言語の数も多すぎて圧倒されてしまいますよね。しかしインドの言語に驚かされるのは言語数だけではありません。
言語の多様性① 語族の異なるインド言語
話されている言語数が多いと、多くが同じ言語から派生していてお互いに似通った言語ばかりなのではないだろうか、と考えた方もいらっしゃるかもしれません(たとえば、ラテン語を祖語とするイタリア語とスペイン語などのように)。
もちろんそういった言語も多数存在しますが、インドの言語を語族で分けると、
- インド・ヨーロッパ語族
- ドラヴィタ語族
- ムンダ語派
- チベット・ビルマ語派
などに大別されます。インド・ヨーロッパ語族には英語・スペイン語・ヒンディー語などがあり、ドラヴィタ語族にはタミル語、テルグ語などがあります。語族まで異なるため、すべてが方言のような位置づけではないと理解いただけると思います。
言語の多様性②表記の異なるインド言語
英語や、ヨーロッパ言語はほぼアルファベットで表記されるので、読めばなんとなく音はわかるということがありますが、インドの言語はそれぞれ異なる文字表記を持つ場合も多いです。
画像参照先:インド展望, インド政府外務省
上記の看板はインドの南に位置するケララ州の道路標識です。「サバリマラ」という有名なお寺への標識となるのですが、一番上がケララ州の公用語マラヤ―ラム語、その下がヒンディー語、テルグ語、カンナダ語、タミル語、英語表記と続きます。(テルグ語、カンナダ語、タミル語はそれぞれインドの南に位置する州の公用語です。)上から3番目と4番目はかなり文字表記が似ていますが、上から2番目のヒンディー語とは全く似ていないことがお分かりいただけるか思います。
またヒンディー語とウルドゥー語(北インド・パキスタンを中心に話されている)は言語学的には同じ言語の2つの標準といわれていますが、大きく違う点としてヒンディー語がインド系の文字デーヴァナーガリーで表記されるのに対して、ウルドゥー語はアラビア文字系のウルドゥー文字で表記されるというところです。
画像参照先:Stainless Steel Street Sign Board Application: Indoor/Outdoor, TradeIndia
上記の看板はデリーにある道路標識の看板ですが、上からヒンディー語、英語、マラーティー語(ムンバイのあるマハラシュトラ州の公用語)、ウルドゥー語です。ヒンディー語とマラーティー語は同じ文字(デーヴァナーガリー)で表記されているので、かなり似ていますが、ヒンディー語と一番下のウルドゥー語は似ても似つかぬ文字で表記されています。
文法や基本語彙は同じため、相互理解は可能だということですが、表記が異なるだけでも全く違う言語の印象のため、日本人の筆者は不思議な感覚を覚えました。
マルチリンガルがたくさん?
これだけ言語が多くあると、インド国内でもコミュニケーションに困りそうだなと思われたのではないでしょうか。
実はインド人はマルチリンガルな人が多いのです。インドでIT会社に勤めているような世代ですと、英語+州の公用語+ヒンディー語で最低でも3言語は話せるという方が多くいますし、ネイティブとまではいかないが話していることはわかる言語までカウントすると5~6言語は使えるという方もいました。
しかし、60歳以上の年代で低いカーストに属していた方などは教育が満足に受けられなかったため、居住している州の公用語のみを話すという方も多くいらっしゃいます。
まとめ
今回はインドの驚きの多い言語事情を少しだけご紹介しました。以前、インド政府ではインド全土で公用語をヒンディー語のみに統一するという動きがありましたが、各地で反発があり言語を統一するのが難しい現状があるようです。
そういった背景もあり、話者数の伸びそうな言語をたくさん抱えるインドの言語。翻訳が必要な場合は川村インターナショナルにご相談ください。ヒンディー語、ベンガル語、タミル語など、たくさんのインド言語に対応が可能です。
参照:
- インド展望, インド政府外務省(2022年9月9日閲覧)
- インドの言語, ウィキペディア(2022年9月9日閲覧)
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