英日翻訳における「誤訳を招きやすい単語たち」
筆者は業務上、翻訳者の方の訳文をチェックする機会が多くあります。いろいろな方の訳文に触れていると、誤訳しやすい単語というものが見えてきます。そこで今回のブログでは、誤訳を招きやすい単語をご紹介したいと思います。
目次[非表示]
- 1.~(チルダ)
- 2.i.e.
- 3.High-level
- 4.まとめ
- 5.川村インターナショナルの翻訳サービス
~(チルダ)
意味:およそ、約
「チルダ」という言葉(「ティルダ」という場合もあります)は、耳慣れない方も多いのではないでしょうか。見た目は日本語の波ダッシュ(~)とよく似ていますが、別の記号で、意味も異なります。日本語の波ダッシュ(~)は範囲を表す場合に用いられ、「1~10」のように使用されます。また、「~10」とした場合は「最大10」「10まで」といった意味になります。
対するチルダ(~)には範囲を表す意味はなく、「およそ」「約」という意味になります。またチルダは、「およそ」や「約」という意味の性質上、必ず数字の前に使用されます。日本語の「1~10」のように、数字と数字のあいだに使用されることはありません。
ここで例文を見てみましょう。
【例文】
~11,000 athletes participated in the Tokyo Olympics. およそ11,000人のアスリートが東京オリンピックに参加した |
このチルダ(~)を日本語の波ダッシュ(~)と同じ意味に捉えて、「最大で11,000人のアスリートが東京オリンピックに参加した」と誤訳するパターンが非常に多くあります。正しくは、「およそ11,000人のアスリートが東京オリンピックに参加した」ですね。翻訳に携わる人であれば心得ていると思いますが、数字の翻訳は非常にシビアです。「およそ」を「最大で」と間違えただけで深刻な問題に発展する可能性もあるので、チルダは特に注意したい単語です。
i.e.
意味:すなわち、つまり、言い換えると
i.e.はラテン語のid estという言葉を略したもので、「すなわち」「つまり」「言い換えると」という意味です。これとよく間違われるのが e.g.。こちらもexempli gratiaというラテン語を略したもので、「たとえば」という意味です。i.e.とe.g.を混同してしまうのでしょうか、i.e.を「たとえば」と誤訳してしまうパターンを非常によく見かけます。反対にe.g.を「すなわち」と誤訳するパターンは(筆者の場合はですが)見たことがありません。
【例文】
The Olympic symbol represents the five continents of the world, i.e. Europe, Africa, Asia, the Americas, and Oceania. オリンピックシンボルは、世界の五大陸、つまりヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカ、オセアニアを表している。 |
High-level
意味:大まかな、ざっくりとした
High-levelと聞くと「高度な」「高水準の」という意味が一番に思い浮かぶ方も多いと思います。その意味でも間違いはありません。たとえばHigh-level meetingだと「上層部のミーティング」という意味になります。
ところが、High-level overviewやHigh-level descriptionという場合は? 「高度な概要」? 「高度な説明」? なんだか意味が分かりませんよね。実はHigh-levelには「大まかな」「ざっくりとした」という意味もあり、この場合は直訳すると「大まかな概要」「ざっくりとした説明」という意味になります。
High-level、つまり高い所から見下ろす=俯瞰する、というイメージでしょうか。High-level~~という英文に遭遇したときに「高度な」とするとしっくりこない場合は、「大まかな」「ざっくりとした」の意味で訳せないか検討してみてください。
まとめ
誤訳を招きやすい単語を、一部ですがご紹介しました。悲しいかな、翻訳には誤訳が付き物です。しかし、単語レベルという初歩的な誤訳はなるべく減らしたいもの。今回のブログが誤訳防止の一助になれば幸いです。
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