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映画とビジネス用動画の字幕翻訳の違い 川村インターナショナルの翻訳ブログ

映像翻訳を徹底解説!映画とビジネス用動画の字幕翻訳の違いとは


目次[非表示]

  1. 1.翻訳のジャンルと字幕の位置付け
  2. 2.1秒4文字という字幕の絶対ルール
  3. 3.1行当たりの字幕表示の文字数
  4. 4.原文と字幕の関係
    1. 4.1.初めから訳出しない
    2. 4.2.まったく別の言葉、別の意味を当てはめる
  5. 5.まとめ
  6. 6.川村インターナショナルのサービス

翻訳のジャンルと字幕の位置付け

翻訳業界のジャンルといえば、出版翻訳、映像翻訳、産業翻訳という切り分けが一般的です。

映像翻訳には大きく字幕と吹替というカテゴリがあり、長い間、映画やドラマをはじめとしたエンターテイメント業界での需要が大半を占めていました。しかし、企業がさまざまな場面で動画を活用するようになり、字幕翻訳の需要が高まっています。

格闘技の世界でもボクシングとキックボクシングが似て異なるもののように、エンタメ系とビジネス系の字幕もまた異なる要素を持っています。今回は本来の字幕のルールや訳し方と、ビジネス用の字幕翻訳との違いにについて説明したいと思います。


1秒4文字という字幕の絶対ルール

通常の字幕においてまず挙げられるルールが、1秒当たり4文字という字数制限です。これは、文字の読める子どもからお年寄りまでの大半の人がストレスなく読み取れる情報量であると解釈されており、1930年代の映画字幕の黎明期から変わらずに続いているルールです。字幕を付ける作業において、このルールは、セリフが少なく間の多いシーンでは問題なくクリアできますが、セリフが多くて展開の早い作品では、字数を抑えるために苦労する最大の障壁となります。

一方、ビジネス用の動画では、1秒4文字を基本としつつ、もう少し柔軟に運用されています。そもそも、ビジネスの場面において、1秒4文字という情報量では伝えきれないことが多くあります。カタカナで表記されることも多いビジネス用語も多数出てきますし、外資系企業の製品名やサービスの紹介では、長すぎてどう工夫しても対応できないということもあります。そのため、場合によっては1秒5~6文字になってしまうことがあります。もちろん、事前に担当者の方にレビューしていただき、早すぎて読めないということがないように調整を行ってから納品します。


1行当たりの字幕表示の文字数

映画の字幕で一般的な文字数は、1行当たり最大13文字で行数は2行までとなります。ビジネス用の動画では、当社の場合、ここを1行当たり最大20文字程度まで、行数は同じ2行としています。

これは、文字数を多めに表示した際に改行の回数を減らす効果があり、同じ情報量でも読みやすさを向上させる狙いがあります。最大20文字という制限も絶対ではなく、仕方のない場合は21文字となってもOKとしていますが、この例外はかなりまれで20文字あればほとんどの場合に対応できます。


原文と字幕の関係

映画の字幕翻訳では、字数制限に対して様々な方法で対処しています。その方法をご紹介してビジネス向けの動画との違いを見ていきたいと思います。

初めから訳出しない

もう、不要な要素は切って切って切りまくります。そこまで思い切らないと4文字ルールの準拠はかないません。一つのセリフに二つの要素があるときは、前半はカットして後半のみ訳出するといったこともなされます。一例をご紹介します。

I would die for her.
I would kill for her.

これは、映画『アダムスファミリー』のワンシーンで主人公のゴメズが妻のモーティシアに愛を語り掛けるシーンです。通常のロマンチックなシーンなら1行目のセリフで終わるところ、コメディ映画なので余計な一言を追加してコミカルに描かれています(本人は大真面目)。ここを普通に訳出するなら、以下のようにするのが妥当ではないでしょうか。

君のために死ねる

人だって殺せる

ところが、このセリフは約3.5秒で話されています。ルールにのっとって考えると使える字数は14文字になります。さて困りました。1文字削らなければなりません。そして、実際の字幕では次のようになっていました。

君のためならーー

人だって殺せる

愛しているということを言い換えているだけなので、前半の死んでもいいという部分はカットしてしまおう、という判断だったのかもしれません。シーンに沿った雰囲気でスッキリとして、字幕としてはより洗練されたと思います。

ビジネスで愛を語るシーンはあまりありませんが、ビジネス用の字幕であれば無理に削らないほうがいいので、一つ目の訳のほうが適切だと言えます。

まったく別の言葉、別の意味を当てはめる

映画では、シーンによって全く意味の違う言葉を当てはめて話を進めるという手法も見かけます。元の言葉に対する適切で簡潔な訳がない場合や、話の流れとして自然な日本語の慣用句を当てはめてしまったほうが分かりやすい時などに使われます。これは当社のTranscreationというサービスに近いものです。

一方、ビジネスの字幕においてその手法を使うわけにはいかないということは容易に想像できると思います。


まとめ

90年の歴史がある字幕の世界の中で、ビジネスでの活用が急速に広がってきたのはこの10年ほどです。字幕翻訳は、翻訳者が活躍する業界としても別のジャンルのものでしたが、今では産業翻訳の中の1ジャンルとしてこれからも需要が増えていくものと考えられます。字幕の字数制限は90年間不変でしたが、ビジネス用字幕翻訳は、もとのルールに準拠しながらも、変化するビジネス同様に独自の変化を遂げています。

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川村インターナショナルWebマーケティングチームです。開催予定セミナーやイベントの告知、ブログ運営などを担当しています。

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