「翻訳の日」withコロナ
はじめに
コロナの影響により、弊社の社員ほぼ全員が2020年2月末から在宅勤務となり、今でもこの状況は続いています。私にとっては、ガランとしたオフィスに出社する寂しい毎日が始まってからすでに7カ月が経過したことになります。昨年9月末に『翻訳の日』のブログを書いた頃には想像もできなかった社会になり、Withコロナ、Afterコロナ、ニューノーマルと聞きなれなかった言葉も、今では日常用語となっています。そして、「翻訳の日」も例外なくコロナの影響を受けています。
2020年の「翻訳の日」&「翻訳祭」
コロナ下で、今年の「翻訳の日」は日本翻訳連盟(以下連盟)もお祝いを中止し、新聞広告もやらないようです。翻訳業界の認知度向上を願う皆さまにとっては残念なことではありますが、仕方ありません。さらに、連盟が9月30日「世界翻訳の日」の記念イベントとして始め、今年で30回目となる「翻訳祭」も中止になりました。その代りに、11月9日(月)~21日(土)「JTF Online Weeks(翻訳祭29.5)」が開催されることになりました。
テーマ:つながる時代を生き抜くために ~原点への回帰と進化の道程~
開催形式:Zoomオンラインウェビナー
翻訳祭29.5とは、普通に開催されるとしたら30回目になる「翻訳祭」が、参加者が直接集まれない分0.5引かれ、29.5回目の翻訳祭という意味だと解釈しました。例年通りとはいかなくても、少なくともzoomでセミナーを行うことになり、よかったです。私のように、Zoomの長時間使用が苦手な人間には、1日のセミナー時間が2~3時間であるのは助かります。直接翻訳関係の皆様にお目にかかれないのは残念ですが、今は、コロナにもかかわらず元気で無事働き続けられることに感謝しています。
「翻訳の日」とは
皆様の中には、「翻訳の日」って何だっけ、と思っている方もいるかもしれませんので、簡単にご紹介します。「翻訳の日」とは1953年にパリで設立された国際翻訳家連盟(Fédération International des Traducteurs=FIT)が、翻訳の守護神である聖ヒエロニムス(ジェローム)の祝日を9月30日に決めたことに由来します。諸言語と古典に通じた聖ヒエロニムスは、聖書をラテン語に翻訳した神学者として知られていています。聖ヒエロニムスが翻訳した聖書は、ウルガタ訳聖書と呼ばれ、中世から20世紀までカトリックの聖書のスタンダートだったそうです。
翻訳の仕事をしている方は想像できるかもしれませんが、聖書翻訳のために使われた時間と努力の膨大さは言語を絶するものだったはずですし、翻訳が完成した時の喜びも言葉に尽くせないものだったのでしょう。
小さめなライオンの足から刺を抜く聖ヒエロニムス
(パリルーブル博物館所蔵「聖ヒエロニムスとライオン」の画像)
また、翻訳者の役割の重要性については、2017年国連総会で専門の翻訳者の果たす役割を重視する決議が採択され、9月30日が「国際翻訳デー(International Translation Day)」として公式に認定されたことは嬉しいニュースでした。
聖ヒエロニムスに関する情報はネットで調べたものですので、ご興味のある方はさらに深堀してください。
今後、コロナの終息がいつになるのかはわかりませんが、少なくともコロナ後には、社会システムに変化が起きているはずです。勤務形態、勤務場所の選択の自由、上司と部下の人間関係の変化も起こるでしょう。厳しい環境の変化のもとで翻訳業界がさらに世間に認知されるためにも、9月30日の「翻訳の日」を大切にしていきたいと思っています。
株式会社川村インターナショナル
代表取締役会長 川村みどり