日本語のオノマトペについて考えてみる
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オノマトペ?オノマトピア?
「オノマトペ」というちょっと不思議な言葉、皆さんも一度は聞いたことがあると思います。筆者としては、ここ20年ほどで人口に膾炙するようになった言葉の一つだなと感じています。
日本語のオノマトペは、擬音語と擬態語の総称(上位概念)とされています(※1)。オノマトペに当たる英単語は「onomatopoeia」で、発音としては「オノマトピア」に近いです。多く使われる「オノマトペ」というカタカナ表記はフランス語の「onomatopée」に由来するようですが、「オノマトピア」や「オノマトペア」も稀に見かけます。
この記事では、英語をはじめとした他言語のオノマトペと比較しながら、日本語のオノマトペの特徴を2つ紹介したいと思います。
(※1)日本語のオノマトペを擬声語、擬音語、擬態語、擬容語、擬情語(等)に分類するという説もありますが、本稿では便宜上、擬音語と擬態語の二種類としました。
日本語のオノマトペの特徴① 豊富な擬態語
日本語のオノマトペの特徴――その一つは、擬態語が豊富に存在することです。
オノマトペのうち擬音語は、多くの言語で対応する言葉が存在すると言われています。擬音語は自然現象として発生する音を言葉で表現したものなので、どの言語の文化圏であっても、音が存在すればその音を表す言葉が存在します。犬の鳴き声は、多くの場合、日本語では「ワンワン」、英語では「bowwow」、中国語では「汪汪」(「わんわん」と発音します)、フランス語では「ouah ouah」と表現します。
一方、擬態語は物事の状態や心の動きを表す言葉なので、すべての言語に対応する言葉が存在するとは限りません。その状態を言葉で表現したいかどうか(表現する必要があるかどうか)で、その言語での擬態語が存在するかどうかが決まります。時代や環境の移り変わりとともに変化していく種類の言葉でもあります。
擬態語の多さゆえ、日本語のオノマトペは4,000語あるとも5,000語あるとも、また、他言語の3倍から5倍あるとも言われ、正確な数字は諸説あるようですが、とにかく他言語に比べて非常に多いという認識が一般的です。ちなみに、韓国語にはさらに多くのオノマトペが存在するそうです。
この背景として、英語をはじめとした諸言語には様態を含む動詞が日本語よりも多く存在するという特徴があります。たとえば、日本語で「副詞(オノマトペ)+動詞」で表現する状況が、英語では動詞一語で表現されることが多々あります。
よく挙げられる例として、雨が降っている様子を表現する場合、以下のように動詞そのものが別の単語になります。
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また、人が笑っている様子を表現する場合も動詞を使い分けるとしっくり来ます。
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一般に、日本語は動詞が少ない言語であると言われています。動詞のバリエーションを補うために進化してきたのがオノマトペであると考えると、言語の成り立ちにまで興味が湧いてきますね。
日本語のオノマトペの特徴② 畳語
日本語のオノマトペには、「わくわく」「もぐもぐ」「ザラザラ」「さくさく」などの繰り返し言葉=畳語(じょうご)が多数あります。オノマトペに限らず「畳語が多い」というのは日本語の特徴の一つですが、特にオノマトペは、日常的に日本語表現に触れる環境で培われる感覚に依存する部分が大きいため、日本語を学習されている皆さんは最適なオノマトペを習得するまでに大変苦労されるそうです。
畳語を調べていくと、日本語のオノマトペは濁点や繰り返しの有無でモノの大小や時間の長短を表していることに気づきます。たとえば、「コロッと転がった石」、「ゴロゴロゴロと転がった石」と聞くと、前者は小さい(軽い)石が短い時間で、後者は大きい(重い)石が長い時間で転がる様子を想像しますね。
「onomatopoeia」という言葉…実は
日本語のオノマトペについてほんの少し紹介しましたが、いかがでしたか?
古くは古事記にも登場するというオノマトペは、調べれば調べるほど奥が深いテーマで、様々な側面から研究された文献が多数あります。産業翻訳という観点では、実務で遭遇することはあまり多くないように思いますが、知っておくと翻訳が少し楽しくなる話題かなと思います。
実は「onomatopoeia」という英単語には「擬態語」の意味は含まれていません。「擬態語」は英語で「mimetic word」です。「onomatopoeia」という単語が原文に登場したら、多くの場合は「擬音語」とするのが正しい翻訳になるかと思いますが、「擬音語・擬態語」とするのか、はたまたカタカナ表記のいずれかを採用するのか…ちょっと悩んでしまいそうですね。
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