語学力だけじゃない! リサーチ力の重要性
「翻訳者に必要なスキル」と聞いて、何を思い浮かべますか? たとえば、英語から日本語に訳す場合、多くの方が「英語力」や「日本語力」と考えるのではないでしょうか。当然ながら、英語力がなければ原文の内容を理解することはできませんし、理解した内容を、その文章や対象読者にふさわしい自然な日本語で表現するには、高い日本語力が必要です。
英語力や日本語力は、翻訳者にとって大前提のスキルといえるでしょう。この「英語力」や「日本語力」と同じくらい、翻訳者にとって不可欠なスキルがもうひとつあります。それは、「リサーチ力」。
今回は、リサーチ力の重要性にスポットライトを当てたいと思います。
切っても切れない、翻訳と「調べもの」
翻訳作業は、調べものの連続です。たとえ自分が専門としている分野であっても、技術は日々進歩していますから、翻訳の際にわからないことは必ず出てきます。
わからないことに遭遇したとき、ただ辞書を引いてそこに載っている訳語を当てはめるだけでは、原文の意味を正確に伝える訳文は作れません。どんなに小さなことでも、わからないことはきちんと調べて裏を取り、自分の知識として取り込むことで初めて原文の意味をとらえた訳文を作ることができるのです。
当然ですが、原文をきちんと理解して訳すのと、適当に訳すのとでは、訳文のクオリティも変わってきます。そのため、翻訳をするうえで、リサーチ(調べもの)は不可欠な作業となっています。
何を調べるの?
調べものには、専門用語や固有名詞の確認といったものから、原文の背景にある情報の調査などもあります。たとえば、次の文を見てみましょう。
John lost his tooth, so he put it under his pillow at bedtime. 訳:ジョンは、歯が抜けたので、寝るときにそれを枕の下に入れた。 |
なぜ歯を枕の下に入れるのか、ピンとこない方もいるかもしれませんが、これはTooth Fairy(歯の妖精)という欧米の文化に基づく行動です。乳歯が抜けたら、それを枕の下に入れて寝ると、夜のあいだに妖精がやって来てコイン(お金)に交換してくれる、というものです。(うらやましい!)
この例文の場合、Tooth Fairyのことを知っている人が訳しても、知らない人が訳しても、最終的な訳文に大きな違いはないでしょう。しかし、「歯を枕の下に入れた理由はわからないけれど、とりあえず原文に書かれてあるとおりに訳しました」では、翻訳者として失格です。翻訳者は、自分が作る訳文に責任を持たなければなりません。原文が意図していることをきちんと理解できているか、少しでも不安に思うところがあれば、どんなに小さなことでも必ず調べる必要があるのです。
どうやって調べるの?
リサーチの手段はさまざまですが、やはり今の時代、一番よく使われるのはインターネットでしょう。あらゆる情報が瞬時に手に入るインターネットは、調べものの強い味方です。しかし、情報量が多いぶん、インターネットで調べものをするときは注意が必要です。
まず、ただ闇雲に調べていては時間の無駄になってしまいます。翻訳には納期がありますから、いつまでもダラダラとリサーチをしているひまはありません。極端な例ですが、IT関連の調べものをしているときに医療系のサイトを見ていては、いつまでたっても答えは見つかりません。リサーチをするときは、自分が求めている情報がどこにあるのかを意識して行う必要があります。
また、インターネットは、誰でも情報を発信できるため、間違った情報が紛れていることもあります。そのため、表示される情報をただ鵜呑みにするのは禁物です。たとえば、知らない用語が出てきた場合、ネット辞書の訳語をそのまま使用するのではなく、その分野でその訳語が本当に使われているのかチェックして、必ず裏取りをする必要があります。
リサーチには、インターネットのほかにも、辞書や書籍を使うこともあります。場合によっては、人に聞くことも有効でしょう。(ただし、機密情報の取り扱いには気をつけて!)言ってしまえば、リサーチのツールに制限はありません。利用できる、あらゆるツールを駆使して徹底的に調べ尽くすのです。
おわりに
「翻訳」と聞くと、「ある言語を別の言語に変換する作業」と思われがちですが、今回はその陰に隠れて日の目を見ない「リサーチ力」に注目してみました。
実際の翻訳では、言語の変換作業よりもリサーチに時間を費やすことのほうが多いです。冒頭で「リサーチ力は、英語力や日本語力と同じくらい不可欠」と述べました。人によって意見はさまざまですが、筆者自身は、語学力よりもリサーチ力のほうがはるかに重要だと考えています。もちろん、ある程度の語学力は必要ですが、たとえ原文の理解でつまずくことがあっても、適切な日本語表現がわからなくても、それも調べればいいのですから。
また、調べものに付随して、翻訳者は必然的に新しい知識をどんどん取り込むことになります。この、新しい知識を得ることを楽しめることも、翻訳者に大切な資質なのではないでしょうか。
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