翻訳を賢く安く仕上げるコツ~対象・ファイル・チェック~
「翻訳したい文書があるけれど、予算の都合上なるべく費用を抑えたい」そう思われている方は多いのではないでしょうか。企業のグローバル展開が進むにつれ、翻訳の需要は伸び続けています。翻訳を必要とする文書が増える一方で、コストを抑えたい、という強い要望も頻繁に耳にするようになりました。
今回は、そんな要望を叶える【品質を落とさずに翻訳の費用を抑えるいくつかのコツ】を、実際に日本語から英語への翻訳案件をコーディネートするプロジェクトマネージャー(以下PM)がお教えします。
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翻訳を依頼する前に
翻訳が必要な文書が手元にあった場合、何から始めたらよいでしょうか。
とりあえず翻訳会社に見積もりに出したらいいんじゃないの?と思われる方は多いでしょう。しかし、そのまま見積もり依頼を出すと、「前処理で削減できるコスト」まで見積もりに計上されてしまう可能性があります。無駄なコストを省き、見積金額、ひいては翻訳費用をぐっと抑えるために、見積もりに出す前に以下の点を考慮してみてください。
- 翻訳対象外が含まれていないか
- ファイル形式が適切か
- 翻訳後のチェック作業が必須か
それでは、一つひとつの項目を詳細に見ていきましょう。
丸ごと全部?翻訳対象外は含まれていないか
第一に検討すべき点は、依頼しようとしている文書に「翻訳対象外の箇所が含まれていないか」を確認することです。果たして、その文書は一言一句翻訳が必要でしょうか。この問いかけを行うことによって、見積金額を安く抑えることができる可能性があります。
例えば、翻訳会社で見積もり用として預かる文書の中には、英語の参考文献や引用箇所など、すでに一部が英語になっている部分も翻訳対象として含まれている場合があります。また、会社案内に含まれる企業理念や概要など、原文には日本語で記載されていますが、別の文書ですでに対象言語に翻訳され既存訳が存在する箇所が含まれていることもあります。このようなケースでは、翻訳の必要がない箇所が見積もりに含まれてしまうため、費用の無駄になってしまいます。翻訳を依頼する前に、関連文書を検索して、依頼しようとしている文書が一部でも翻訳されていないかを確認してみることをお勧めします。
ちなみに、見落としがちなのがPowerPointファイルのノート部分です。翻訳対象としてPowerPointファイルを預かることは多いですが、たまにノート部分に自分用のメモが残されていることがあります。指定がないと、ノート部分も翻訳対象として含まれてしまうため、依頼をする前にノート箇所の翻訳の要不要を見極めましょう。
このように、実際に翻訳が必要な部分を絞ることで、コストに大きな違いを生むことができます。
「そのファイル、開けません」ファイル形式は適切か
次に「手元にある文書が特別なアプリケーションなしで編集可能かどうか」を確認しましょう。
ワードやエクセルであればすぐに翻訳を開始できますが、PDFやInDesignなどの編集をするのに特別なアプリケーションを必要とするファイルは、場合によって追加の工程が発生することがあります。これは翻訳作業に移る前に編集可能なファイルに変換する必要があるためで、この追加の工程により費用が増えるケースが多くあります。不必要なコストを削減するためにも、原文のファイルについて、適切なファイル形式(編集可能なファイル)になっているか、もしくはその形式に変更できないかを確認してみましょう。(例えば、PDFファイルについて、オリジナルのwordファイルがないか、など確認してみてください。)
また文書に画像が含まれている場合も要注意です。まずは画像内の文字も翻訳が必要かを吟味し、必要な場合は画像内の文字が編集可能かを確認することが重要です。編集できない場合には、画像内文字を抽出して翻訳し、訳文を元の画像に貼り付ける、もしくは画像ごと編集するという2つの追加工程が発生し、費用が膨らみます。画像内文字まで翻訳する場合は、編集可能な画像の元ファイルがないかをチェックするだけで、見積金額が大きく変わるかもしれません。
ドラフト翻訳でもよい?チェックは必須か
最後に、翻訳する文書に求める品質を確認することも大切です。
通常の人手翻訳には、以下のグレードがあります。
- 翻訳のみの「ドラフト翻訳」
- 翻訳+フルチェックの「通常翻訳」
通常翻訳では、翻訳者の納品後にバイリンガルチェッカーが原文と照らし合わせながら誤訳、訳抜けの有無等を綿密にチェックします。ドラフト翻訳では、翻訳者のタイポ/スペルミスなどのセルフチェックにとどまりますので、フルチェックで細かいミス等を拾う工程がなくなりますが、その分工程が1つ少なくなりますので、通常翻訳と比べると当然翻訳の金額は下がります。
そのため、成果物に求める品質に応じて、「ドラフト翻訳」と「通常翻訳」を使い分けると、不必要なコストを削減することができます。
例えば、公文書や、社外に向けて発表・提出するための文書はドラフト翻訳には向きませんが、社内用の文書で高い品質が求められない場合であれば、ドラフト翻訳にして翻訳費用を抑えることも選択肢にいれてもよいでしょう。
また、人手翻訳ではなく機械翻訳を取り入れることもコスト削減を実現できます。機械翻訳を使用した場合のコスト削減については、こちらの記事で取り上げているのでぜひご一読ください。
上級編にも挑戦?翻訳メモリの活用
以上で3つのコツをお伝えしましたが、上級編としてさらに価格を抑える方法を紹介します。
手元にある翻訳するべき文章が大量で、しかも文章内の内容が似通っている場合(機械のマニュアル等に多い)にはお勧めの方法があります。翻訳支援ツール(通称CATツール)での翻訳を翻訳会社に依頼することで、翻訳メモリ(TM)を作成して、翻訳費用を抑えることができます。
CATツールでは一度翻訳した文をメモリとしてTMに残しておくことができます。この機能により、文書内で同じ文もしくは似た文が出てきた時にそのメモリを活用し、翻訳者の負担を軽くすることが可能です。翻訳者の労力が減るということはかかる費用も抑えられるということです。文章の量が多い場合は、翻訳が進めば進むほどメモリの内容も充実してきますので、トータルで費用を大幅に抑えることができる案件もあります。またTMを作成しておくと、翻訳した文書の改訂版が出た時にはTMを流用して変更された部分だけを翻訳すればよくなりますし、CATツールの自動検出機能を使用すればいちいち新しく加えられた箇所を確認する必要もなくなります。
一方、CATツールの使用には場合に応じてデメリットが発生します。まず、全ての翻訳者がCATツールを使用しているわけではないのでCATツールを使用する翻訳者のスケジュール調整がつかない場合、翻訳者が空くまで待たなければならないケースがあります。また、分量の多い案件であっても同じような表現の繰り返しが少なければ、TMの恩恵を受けられません。さらに、TMを整備するにも費用がかかりますので、翻訳の分量が少ないと逆にコストが高くつく場合もあります。
以上を踏まえて、翻訳会社に見積もりを作成してもらうときには「TMを作成してCATツールで翻訳する場合」と「TM・CATツールなしで翻訳する場合」というようにパターンを分けて見積もってもらうとよいでしょう。納期などの条件と、メリット/デメリットを含めて検討されることをお勧めいたします。
まとめ
翻訳を安く仕上げるには、安い翻訳会社に依頼するだけがソリューションではありません。翻訳は人の手で行われていますので、安すぎる金額は翻訳の質にも大きく影響を与える可能性があります。
質を落とさず、安く翻訳を仕上げるコツを取り入れて前処理を行いながら、状況やケースに応じてサービスを使い分けるのがよいでしょう。
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