永久保存版!翻訳の業界用語 Part 1
「CAT」「MTPE」「ニューラル翻訳」・・・。翻訳に限らずあらゆる業種において、その業界内で当たり前のように交わされる言葉がありますが、翻訳業界でも様々な業界用語が存在します。
実際に翻訳を発注したいと考えている場合に、翻訳会社とのコミュニケーションの中でこれらの言葉を知っていれば「?」となることも少なくなるかもしれません。
今回は、そんな業界用語の中から代表的なものをピックアップし、簡単な説明を交えながら解説していきたいと思います。
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LSP
Language Service Providerの略で、その名の通り、言語に関するサービスを提供する人や組織のことです。
LSPのほとんどは翻訳や通訳といったサービスを展開していて、翻訳会社だけでなく、個人の翻訳者もLSPと言えます。
翻訳会社は英語では「Translation Vender」や「Language Vender」などと呼ばれます。日本語でも「ベンダー」と言うことがあるので、耳にする機会は多いかもしれません。
CATツール
CAT とは Computer Assisted Translation の略で、「キャットツール」と読みます。日本語にすると「コンピューター支援翻訳」になります。
翻訳ソフト(翻訳ツール)と混同する人が多いですが、CATツールは人間が翻訳を行う際に使用するソフトウェアで、翻訳ソフトはそのツールそのものが翻訳を行うものです。
CATツールは翻訳者がより効率的に、高品質な翻訳を生み出すことができるように設計されており、様々な企業によって多様な製品が提供されています。
CATツールについて特集した記事はこちらからご覧いただけます。
TM
TMとはTranslation Memoryの略で、過去の原文と対訳をデータベースとして蓄積し、再利用するためのものです。翻訳メモリ、と言われることもあります。
現在の翻訳においては、効率的なコストダウン、工期短縮、精度向上を目指す上で欠かせないものとなっています。
バイリンガルファイル
1つのファイル内に原文と訳文両方の情報が含まれているものをバイリンガルファイルと呼びます。
一般的には各種CATツールが持つ独自の形式のファイル(xlf)のことを指しますが、例えばExcelやWordに原文と訳文を表で並べたようなものもバイリンガルファイルです。
機械翻訳/自動翻訳
機械翻訳とは、コンピュータープログラムを使って、ある言語を他の言語に機械的に翻訳することです。現在は自動翻訳、と呼ばれることもあります。
一番分かりやすい例は、Google翻訳で、翻訳したいテキストをエンジンに入力すると、それがターゲットの言語に訳出されるという仕組みです。
従来は原文と訳文が対になった翻訳メモリを収集し、そのデータをもとに統計ベースで行う機械翻訳が主流でした。しかし、近年になってAIの台頭に伴い、ニューラルネットの学習アルゴリズムを活用したニューラル翻訳が登場し、大きな注目を集めています。
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- 徹底解説!機械翻訳の発展と人工知能の歴史
- 何がすごい?今流行りのニューラル翻訳とは?
- 【検証記事】Googleのニューラル機械翻訳と他の機械翻訳を比較してみた
- Google翻訳があれば翻訳者は要らない!?変換点を迎えた機械翻訳
- 徹底解説!自動翻訳と機械翻訳の違いとは
ポストエディット
ポストエディットとは、機械翻訳にかけられた翻訳対象の文章に対して専門の作業者が編集を加え、訳文として仕上げる作業のことです。
以前は機械翻訳の出力結果の品質が良くなかったため、ポストエディットをするくらいなら一から翻訳したほうが早いという場合も多く、あまり一般的な作業ではありませんでした。
しかし、機械翻訳の精度向上により、作業者への負担が軽減され、現在では翻訳サービスの一つとして需要が伸びつつあります。
こちらの記事でもご覧いただけます。
MTPE
Machine Translation + Post Editの略です。「機械翻訳+ポストエディット」のサービスを指します。
機械翻訳エンジンを使用するためには利用料が必要であったり、独自のツールを導入する必要があるため、翻訳会社に原文を機械翻訳にかけるところから依頼したい場合、このサービスを利用するのがおススメです。
川村インターナショナルでもMTPEサービスを提供しております。興味のある方はこちらのページをご覧ください。
ISO17100
翻訳サービスに関する国際規格です。仕様に適合する高品質の翻訳サービスを提供するために、必要な過程および資源、その他の要求条件が定められています。
翻訳の品質そのものに対する規格ではなく、品質の高い翻訳を提供するためのワークフローが定義されています。
川村インターナショナルでも、ISO17100に準拠した翻訳サービスを提供しています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
TMS
Translation Management Systemの略で、翻訳のワークフローを一つのプラットフォームに集約し、工程を最適化するためのツールです。
ブログやWebサイトを管理するCMS(Contents Management System)の翻訳版というのが近いかもしれません。TMSの多くは翻訳ワークフローの管理、請求支払いなどの経理の機能、データベースなどの機能があり、固有の翻訳ツールが実装されているものもあります。
TMSが持つ機能をどこまで利用するかは利用者によってそれぞれ異なりますが、翻訳を請け負う側も、翻訳を発注する側もTMSを利用するケースがあります。
言語ペア
翻訳の元となる言語と、翻訳先の言語の組み合わせのことを言語ペアといいます。
英語から日本語またはその逆の場合「英日/日英」やロケールで「en_US -> ja_JP」のように表されることがあります。
ソース/ターゲット
原文/訳文という意味で用いられることがあります。
「ソース言語」(原文言語)「ターゲット言語」(訳文言語)のように翻訳対象の言語を表すときにも使用します。
スタイルガイド
翻訳分野でのスタイルガイドは、成果物の表記ルール、言葉遣い、定形表現、ものによってはCATツールに関する補足などが含まれたものです。
スタイルガイドは発注側で作成、提供される場合が多いですが、翻訳会社で表記ルールを定義してスタイルガイドを作成するケースもあります。
スタイルガイドに関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
あいまい一致、ファジーマッチ
TMを使って翻訳を行う場合、翻訳対象とTM内のエントリーが部分的に一致しているケースを指します。
あいまい一致箇所は、一致している部分は原則そのまま流用できるため、コストと工期を圧縮することができます。
差分
翻訳分野での差分は、翻訳コンテンツの古い原文と新しい原文で差異のある部分を意味します。
前述のあいまい一致を利用した翻訳は、その差分を利用した手法です。TMが一般的になる前から行われていた方法で、Wordファイルなどの新旧文書をデータで比較して、差分のある箇所だけ翻訳する「差分翻訳」という翻訳方法もありますが、ツールが発達した近年ではあまり行われていません。
ネイティブチェック
ターゲット言語を母国語とするネイティブが訳文のチェックを行うことです。
プルーフリード(Proofreading)もほぼ同じ意味で使われます。
ドキュメントエンジニアリング
ドキュメントエンジニアリングとは、翻訳後のレイアウトが大きく崩れないように翻訳の前段階でファイルを加工する作業のことです。
翻訳会社に見積もりを依頼すると、この費用が計上されることが多いため、目にする機会があると思います。
ドキュメントエンジニアリングの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
おわりに
筆者が翻訳の世界に入ったとき、今回紹介した業界用語は一つも知りませんでした。
今後も多様化していくこの業界では聞き慣れない言葉がたくさん生まれてくると思われます。今回紹介しきれなかったものもたくさんありますので、今後もこのブログで紹介していきます。