Google翻訳があれば翻訳者は要らない!?変換点を迎えた機械翻訳
Google翻訳の精度向上やDeepLの日本語翻訳対応化など、近年成長が目覚ましい機械翻訳。旅行会話のスマホアプリの開発や、特許翻訳用ソフトの開発で、翻訳者の仕事はなくなるのでは?という議論も活発になってきています。機械翻訳の歴史と現状、今後の展望について紹介します。
機械翻訳とはなにか?従来の翻訳の課題
機械翻訳とはコンピュータープログラムを使って、ある言語を他の言語に翻訳することです。翻訳は長年、語学に堪能であると同時に対象言語の使われている国や地域への造詣が深いことが必要な、人的資源に頼った専門職として考えられてきました。
翻訳者に適任な人を探すにも、翻訳作業にもコストや時間がかかることが課題であったため、機械翻訳の導入が望まれていたのです。近年では、文書の翻訳だけではなくwebサイトの翻訳も必要になっており、大量の翻訳が短納期で求められるようになっています。そのため、機械翻訳の実用化や精度の向上が急ピッチで進められています。
人々を驚かせた!機械翻訳の歴史と変遷
機械翻訳の始まりは50年以上も前にさかのぼります。1954年にアメリカのジョージタウン大学とIBM社が共同で機械翻訳の実験を行いました。当時の最先端のコンピューターを使った機械翻訳は、250の単語と6つの構文を使うルールベースを採用したもので、ロシア語から英語に翻訳された文章は、多くの人に衝撃を与えました。アメリカ政府が多額の研究予算をつけたことで、機械翻訳の実用化に向けた取り組みが始まったのです。
その後、技術発展に伴って多くの改良が加えられ現在では商業ベースで利用される水準にまでなりました。背景には、ハードウェアの進化、大量の言語データの集積、音声認識で言語データを統計的にモデル化できるようになったこと、コンピューターが記憶に基づいて推論できるようになったことなどがあげられます。
これに伴い、翻訳の手法もルールベースから、統計ベース、そしてGoogle翻訳に代表されるようなニューラル翻訳へと進化していきました。
多言語対応へ!躍進する統計翻訳
2000年以降、機械翻訳の研究は急速に進みました。統計ベースの翻訳には、集積した翻訳データを元に類似した翻訳データの中から対訳を検出し、それを修正しながら翻訳を行う対訳メモリを使った方法と、集積した対訳メモリを使って統計的なモデルを学習し、自動的に翻訳を行う統計翻訳の方法があります。
統計ベース以前のルールベースの翻訳では、翻訳を行う前に翻訳のルールの定義づけが必要であったため、多言語に対応することが難しく、開発コストもかさむことが課題でした。統計ベースの翻訳は、大量のデータの集積があれば、コンピューターにパターンを学習させることが可能なので、多言語に対応することができます。
また、専門用語の翻訳が必要になる専門分野では、統計ベースの翻訳方法であれば、訳のばらつきもなく均一な翻訳が可能になります。しかし、日本語と英語のように文法構造が異なる言語間では、句の並びが異なるので翻訳の精度が低く、ポストエディットと呼ばれる後編集が必要でした。
全部お任せ?ニューラル翻訳にも人間の修正「ポストエディット」は必要か
統計翻訳の弱点をカバーするものとして登場したのがニューラル翻訳です。代表的なGoogle翻訳は、そこにニューラルネットの学習アルゴリズムを導入することで、単語の意味だけでなく句や節の位置まで考慮した、これまでになかったパターンの翻訳も可能になっています。
統計翻訳は元になるデータ量がものをいうので、大量のデータを収集できるGoogleは非常に有利な立場にあるといえるでしょう。優秀な人材が多く集まっていることもアドバンテージです。従来の機械翻訳は精度が低いため参考程度にしか考えられませんでしたが、Google翻訳の登場で機械翻訳の業界は転換点を迎えたと言われています。
しかし、いくら機械翻訳の性能が向上したとしても人の手による作業がなくなることはないでしょう。ニューラル翻訳になっても、翻訳された文の修飾関係が正しいかどうか、対象言語の文化的背景にまで気を配る人間の判断は必要だからです。
特に文芸作品や映画の字幕は、単なる言葉の置き換え作業ではなくオリジナルの世界観を損なわずに行う、創作活動でもあるので機械が担うには限界があります。こうした創作活動を担うプロフェッショナルな翻訳者の需要は益々増えるでしょうし、機械翻訳が活用できる分野でもポストエディットの需要は今後伸びてゆくと思われます。大きな変化を迎えている翻訳業界の今後の動向を見守っていきましょう。
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