徹底解説!翻訳業界の現状と今後
-業界調査会社によると、世界の翻訳・ローカリゼーション市場は堅調に推移しているといわれている。日本では2020年のオリンピックに向けて、訪日外国人4000万人、同消費額8兆円を目指す観光ビジョンが経産省から発表されて久しいが、観光・インバウンド関連以外の翻訳・ローカライズ市場はどう推移しているのか。
また、AIを活用した機械翻訳の精度が向上したことにより、「AIが人の仕事を奪う」といった論調で翻訳業界の存続を危ぶむ声も聞かれるが、こうした意見は、現在の市場のニーズを正しく反映しているのだろうか。 -
翻訳業界の現状と今後の需給の見通しについて解説します。
翻訳業界について知ろう!
「翻訳」と耳にしたとき、どんなものをイメージするでしょうか。
映画やドキュメンタリーの字幕を取り扱う映像翻訳、海外書籍や文庫本を取り扱う出版翻訳を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、最も市場規模が大きいのは、契約書やマニュアル、特許明細などを各国語向けに翻訳する産業翻訳なのです。
企業が翻訳を依頼する先としては、翻訳専門会社や翻訳者個人のほか、急速に翻訳精度が向上している機械翻訳やクラウドソーシングなどがあります。
フリーと社内翻訳者、翻訳会社とクラウド
フリーランス翻訳者
最も身近なのは知人などを含めたフリーランス翻訳者への依頼です。
特に知人への依頼は、依頼する側にとって気軽に頼める存在です。
気軽さゆえ価格交渉もしやすい利点がありますが、知人でないフリーランス翻訳者であれば交渉はしづらいですし、何よりなかなか出会える機会がありません。
また、マンパワーに限界があるためボリュームがある場合や複数言語への翻訳が必要な場合は対応できないのが難点です。
社内翻訳者
外部に委託せずに社内で翻訳者を育成する方法もあります。
フリーランスに比べると、社内翻訳者はコミュニケーションをとりやすく、商品情報や内部情報の共有をしやすいことが最大のメリットです。意図が正確に伝わるので一定の品質も期待できます。
一方、常時翻訳対象のドキュメントがない企業では、翻訳専門のスタッフを抱えることはコスト増につながります。
クラウドソーシング
マンパワー、ボリューム対応という点をカバーできるのが、最近話題のクラウドソーシングです。
場合によっては、安く依頼できることもあります。
しかし、結局は個人の能力次第なので「いい翻訳者に出会えるかどうか運次第であること」や「ムラがあること」「翻訳の品質を保証しないこと」がデメリットです。
翻訳専門会社
専門のスタッフによって、品質管理、工程管理が実施されているため、一定水準以上の品質を確保したい場合や、大量のボリュームを翻訳する場合に適しています。
個人翻訳者への依頼に比べると価格は高くなりますが、改訂時の反映や修正対応など、アフターケアも充実しているため、やはり安心です。
また、TRADOSやMEMO Qといったソフトウェアへの対応力も高いため、構造文書や各種制作物などにも柔軟に対応可能です。
需要はあるの?翻訳者と機械翻訳
次に翻訳業界の需要状況をみてみましょう。
最も需要があるのはやはり英語。アジア諸国企業のグローバル化に伴って、中国語や韓国語をはじめとした言語の需要も高まっています。
経済成長が著しいアジア圏は市場としても魅力的な場所になっていることも理由の一つです。
一方で、ニューラル翻訳の台頭により近年はDeepL、Google翻訳などの機械翻訳の精度が向上しています。
機械翻訳の精度が高まる中、翻訳者は必要なくなるのではないかと心配している人もいるかもしれません。しかし、プロフェッショナルとしての翻訳者の需要はなくならないというのが大方の意見です。
全世界50カ国以上にソフトウェアを販売している、とあるIT企業では、
「翻訳が必要なコンテンツのうち、現在は2%しか翻訳が出来ていない。」と苦労を口にしています。
残りの98%は未だ翻訳がされていない巨大な市場なのです。
翻訳・ローカリゼーション業界専門の調査会社や業界団体のデータを参考にしつつ、今後の日本の翻訳業界の展望について、女性経営者三名に伺う鼎談2019はこちら
言語はいつの時代・どの地域でも必須のコミュニーションツールであり、翻訳は企業活動をするために必要なドキュメントを作成することでもあります。
米国労働統計局では人工知能の発達で今後10年以内になくなる仕事のランキング予測に反して、翻訳業界の成長を見込んでいます。
機械翻訳は日々進化し続けているため、確かに専門性が低く機械翻訳対応できるような単純な翻訳ニーズは少なくなるかもしれません。
しかし、専門性の高い分野や、行間を読んで適切な表現をすることが求められる芸術性が高い小説のような分野では、人による翻訳がなくなる可能性は限りなく低いと考えられています。
優秀な翻訳者にたどり着くには?
既存のチャネルとしては、日本翻訳連盟の「ほんやく検定」合格者のディレクトリがあります。
会員企業であれば1級合格者の一覧にアクセスすることも可能です。
また、翻訳者の力量向上とサービスの信頼性を付与する仕組みとして2017年4月から翻訳者登録制度(https://www.jsa.or.jp/jrca/jrca_rcct)も始まりました。
この制度は国際規格であるISO17100に基づいて評価登録するもので、前述のほんやく検定等の合格実績と合わせて翻訳者としての活動実勢を評価します。
翻訳を仕事にしたい人にとっては、新しい選択肢となるでしょう。
外部サイトによる求人も有効な手段の一つです。
- 翻訳者ディレクトリ(https://www.translator.jp/)
- Proz(https://www.proz.com/)
- アメリア(http://www.amelia.ne.jp/userTop.do)
こうした個人翻訳者へ直接発注できるチャネルは、発注側にとっても一定の品質を確保するための施策を実施しながら個人の翻訳者に直接依頼ができるため、クラウドソーシングのデメリットを補完できると考えられます。
98%の未翻訳物を適切に翻訳する方法
フリーランス、社内翻訳者、クラウドソーシング、翻訳会社。人手翻訳と機械翻訳。
「翻訳」と一括りに言っても、いまやその手段と方法は実に様々です。
そして、その手段と方法によって得られる翻訳結果の品質レベルやスピードも異なります。
重要なのは、予算や用途に応じて、翻訳の方法や委託先(作業方法)を正しく選択することです。お客様のさまざまなニーズへの柔軟な対応と提案力が弊社の強みです。ご質問・ご不明点はお気軽にお問い合わせください。
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