医薬品・医療機器 翻訳サービス:翻訳に必要な医学的知識 No.10 | 主な症状の解説③
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Ⅲ.発熱(Fever)
外来患者の訴え(Complaint)で、痛み(Pain)と倦怠感(Fatigue)に続いて、発熱(Fever)は3番目に多いとされている。
体温調節中枢は視床下部(Hypothalamus)にあり、発熱は設定温度が上方へリセットされた状態である。
リセットは、感染による白血球からのサイトカイン(生体活性物質)放出(Release)が原因である場合がもっとも多い。
正常体温は年齢と共に低下し、小児は37℃、成人は36.5℃、老人は36℃程度と思ってよい。正常体温は個人差があり、成人で36.8℃は、通常は微熱(Slight Fever)であるが、ひとによっては正常範囲内のこともある。体温は生理的にも変動し、朝は低く、夜は高くなり、女性の場合、妊娠によっても上昇する。
日本では、体温測定部位は腋窩(Axilla)であるが、西欧では成人は口腔(Oral)、幼児は直腸(Rectal)である。腋窩体温は口腔、直腸体温よりも0.2~0.3℃程度低い。発熱時、悪寒(Chill)と震え(Shivering)を伴うことが多いが、震えは皮下筋の収縮により体内発熱量を増やし、体温を上げ、逆に発汗(Perspiration)と紅潮(Cutaneous Vasodilation)は体表からの熱放散を促進し、体温を下げる効果がある。不明熱(Fever of Unknown Origin, FUO)は3週間以上、原因が特定できない37℃以上の発熱が続く状態で、入院精査を必要とする。
今年の夏のように外気温が異常に高いと、体温を下げるために発汗が盛んとなるが、発汗による熱放散や、汗で失われた水と塩分の補給(Replacement)が不十分な場合、脱水(Dehydration)が進行、熱中症(Heat Stroke)となる。体温調節機能は加齢によっても低下するため、熱中症のリスクは高齢者で高い。
1. 原因(Etiology)
市中感染(Community-acquired Infection):通常の感染症(例:感冒)
院内感染(Nosocomial Infection, Hospital-acquired Infection)
例:多剤耐性ブドウ球菌(MRSA)感染症など
その他の感染症:結核など
非感染性疾患(Non-infectious Disease):悪性疾患、膠原病など
2. 鑑別診断(Differential Diagnosis)
感染症(Infectious Disease)
- 細菌感染(Bacterial Infections):
- 尿路感染(Urinary Tract Infections):膀胱炎、腎盂腎炎など
- 呼吸器感染症(Respiratory Infections):肺炎、気管支炎。結核など
- ウィルス感染(Viral Infections):HIV感染、など
- 寄生虫感染(Parasitic Infections):マラリアなど
- 真菌感染(Fungal Infections):アスペルギルス症など
- リケッチア感染(Rickettsia Infections) :発疹チフス。ツツガムシ病など
悪性疾患
- リンパ腫:ホジキン病など
- 癌:総ての癌で発熱を伴うことはあるが、腎がんと肝がんでとくに有名である。
- 白血病(Leukemia)
薬物熱(Drug Fever)
薬剤副作用(薬剤アレルギー)による高熱、診断確定までに時間がかかることがある。
抗生剤が原因のことが多いが、見逃すと医事訴訟に発展する危険がある。
詐熱(Factitious Fever)
体温計をこすって発熱があると思わせる詐病。
体に触れば、発熱の有無はすぐにわかるが、2-3日はごまかされることはある。
3. 鑑別診断で注意すべきこと「治癒できる疾患を見逃さない」
原因不明熱(FUO: Fever of Unknown Origin)の診断では、結核、膠原病、および悪性疾患のいずれかである確率がもっとも高い。
結核は、1.治癒可能な疾患で、2.診断が遅れると、院内集団感染の危険が高くなる、の二つの理由で、見逃してはならない疾患である。
肺結核を末期肺がん、もしくは膠原病とする誤診と、逆に末期肺がんや膠原病を肺結核とする誤診では、同じ誤診(Misdiagnosis)でも、治癒できる疾患を見逃したという理由で、前者の方が罪は深い。
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