翻訳のいろは:翻訳に関わる人々~発注から納品まで~
「翻訳」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
映画の字幕、小説、インターネット上のニュースなど、世の中に翻訳は溢れていますが、実際にどんな人が翻訳に関わっているのかは、なかなか知られていないと思います。人によっては、紙の辞書を見ながら、机に孤独に向かう翻訳者が、毎日徹夜をして手書きで翻訳を…など、明治の文豪のような姿を思い浮かべるかもしれません。
今回の記事では、一般的に翻訳会社でどのようにして翻訳案件が動いていくのかをご紹介します。「翻訳を発注したけど、翻訳会社はどんな工程を踏んで訳文を作り上げてるの?」そんな疑問が解消できれば嬉しいです。
目次[非表示]
概要:翻訳案件の大まかな流れ
工程は、大きく7つに分けられます。
そして各工程に主に携わる人がいます。カッコ内が役割名です。
- スケジュールの設定と作業者の選定(プロジェクトマネージャー、以後PM)
- 翻訳(翻訳者)
- バイリンガルチェック(バイリンガルチェッカー)
- モノリンガルチェック(ネイティブスピーカー、専門家)
- 最終確認(品質管理担当者)
- DTP(DTP担当者)
- 納品
それでは、上記の工程の流れに沿って解説します。
今回の記事は大きな流れを掴むためのものなので、各役割の人の詳細な作業や、使用しているツールに関する説明は次の機会に解説いたします。
スケジュールを設定し、案件に適した作業者を選ぶ: PM
お客様から翻訳案件の依頼を受けてから、翻訳会社の制作チームで初めて案件に触れるのはPMです。
PMとは翻訳の案件の進行を管理する役割です。お客様よりいただいたファイル・参照資料を確認し、案件の詳細情報(読み手はだれか、納期、仕様など)、その他の情報を、営業担当者から引き継ぎます。この情報を正確に把握し、この後の工程の方々に伝えるのが、PMの重要な役割です。
案件の仕様の確認後、実際に翻訳・チェック作業をする人を選定し案件の打診を送ります。案件の性質に合わせ、マーケット向けの柔らかい文章が得意な人、専門分野の知識がある人、経歴として特定業界の勤務経験があるかなど、専門性や向き不向きを考慮して作業担当者を選びます。また、目星の作業者のスケジュールを把握することも重要です。
続く工程の翻訳者・チェッカーの方に案件対応の受諾をもらえれば、必要なファイル・情報を各担当者に渡し、案件は次のステージに進みます。
翻訳の要: 翻訳工程(翻訳者)
その名の通り、翻訳を行います。
ただし、ただ翻訳をするだけではありません。翻訳を開始する前に、PMから送られてきた案件の仕様を確認します。お客様によってはスタイルガイドが提供されることがあります。スタイルガイドとは、出版物における表記の統一ルールを明示したものです。例えば、以下のようなものがあります。
本文を、敬体(ですます調)あるいは常体(である調)のどちらかに統一する。
句読点は「、」と「。」を使う。
常用漢字表にある漢字を主に使用する。…etc
(引用元:『JTF 日本語標準スタイルガイドの 12 の基本ルール』)
仕様・スタイルガイドはお客様のご要望のため、これらのルールに則って翻訳をすることが大前提になります。ただ間違いのない翻訳をするだけでなく、仕様に沿ったルールを守りながら、細心の注意を払って翻訳をします。
翻訳が完了したら、所定のセルフチェックを行い、PM宛に納品します。
翻訳のミスを拾い、より高い品質に: バイリンガルチェック工程(バイリンガルチェッカー)
翻訳者が作成した翻訳物を、専門のバイリンガルチェッカーがチェックします。
簡単にいえば、ダブルチェックです。
バイリンガルチェッカーは、原文と訳文を見比べながら、エラーが残っていないかくまなく確認します。
例えば、以下のような点を注意します。
【訳抜け】
翻訳対象にもかかわらず、訳されていない、あるいは欠落している場合や、英語文法上の解釈の誤りがないか
【誤訳】
原文の構文構造が正しく理解されていない、単語の意味が間違っている
【訳文の文法】
誤字、脱字、誤記(英数字の誤り、句読点の誤りなど)
その他にも、お客様からいただいたスタイルガイドに違反していないか、用語の不統一がないか、などの点から、翻訳者から納品された訳文を確認していきます。
専門的な観点から、自然な訳文を仕上げる:モノリンガルチェック工程(モノリンガルチェッカー)
モノリンガルチェック工程では、その案件の分野に精通した専門家や、訳文言語のネイティブスピーカーによるチェックが行われます。
この工程では、バイリンガルチェックの工程と異なり、原則として原文を参照しません。あくまで訳文のみを精査します。そして、対象分野に沿った、読みやすく、自然な文書に仕上げることを目標に、訳文を磨き上げます。
バイリンガルチェックの工程ですでに高い品質の訳文が出来上がるため、川村インターナショナルではこの工程をオプションとしてご案内しています。
極めて専門的な分野の出版物や、会社の顔となるようなマーケティングドキュメントなど、最高品質をお求めのお客様におすすめです。
逆に、納期やコストの都合上、ここまでの工程を踏まなくてもよい、とお考えの場合こちらの工程をスキップされる方が多いです。
品質の最後の関所: 最終確認工程(品質管理担当)
チェックが終わると、品質管理担当者の手に翻訳物が渡ります。
品質管理担当者は、最終的な成果物が基準に達する品質の訳文になっているか、お客様の仕様に準拠した訳文になっているかを確認します。
また、翻訳者・チェッカーから申し送りが来る場合があります。申し送りとは次の工程の人に向けた連絡事項で、例えば「この製品名はインターネットで調べたところ翻訳されていない。英語のままでいいか」「2つの訳し方で迷った。確認してもらえないか」というような内容の連絡が多いです。お客様に伝える必要性の可否で、申し送りの選定を行います。
また、誤訳等の見落としがないか、意味が通らない文がないかなど、最終的な確認を行います。案件によっては大量の訳文を確認するため、修正すべき点が多いと本当に大変です。
現在では品質検査の一部工程を自動化できるQA(品質保証)ツールが多く開発されていますので、ツールを駆使しながら、訳文の最終的な確認を行います。
翻訳物のイメージを決める: DTP工程(DTP担当者)
最終確認が終わると、訳文が組み込まれたファイルを作成し、DTPの工程にすすみます。
DTPの代表的な作業に、翻訳した文章を含むファイルのレイアウトを整えることが挙げられます。
例えば、カタログやパンフレットなど「デザイン」があるものは、翻訳したファイルのレイアウトを再度調整する必要があります。これは、訳文の分量が原文の元の分量から変化してしまい、文字が枠からはみ出たり、画像と被ったりし、レイアウトが崩れてしまうからです。
基本のレイアウトは、原文ファイルのレイアウトに準拠しますが、無理やり原文に合わせると逆に読みづらくなったりする場合があります。状況によってはレイアウトを多少変更して読みやすさ・見やすさを重視して調整を行います。読み手にとってドキュメントのレイアウトは、文書の内容より先に目に入ってくるものなので、DTP担当者はこの部分を重視しながら作業します。
無事、納品!
上のDTP工程を終えて、やっと納品です。たった一つの翻訳案件でも、これだけの人によって確認され、精査され、ようやくお客様の元に届けられます。
もちろん案件によっては、お客様の希望によって工程が減り、関わる人数が減ったりすることがあります。しかし、「翻訳」が一人で孤独に行う作業というよりも、チームワークの作業であり、チーム内の情報伝達や協力体制が重視されているのがお分かりいただけたと思います。
では、そもそもなぜこんなに多くの人が関わるのでしょうか。
それはひとえに翻訳の「質」を保証するためです。完成した翻訳には、翻訳の「質」を保証するために、多くのエネルギーが注がれています。今回の記事を通して、翻訳の舞台裏にいる人々の思いが皆様に伝われば幸いです。
KIのサービス
川村インターナショナルは、統計的な品質管理手法に基づく品質保証で短期・長期の案件で安定した品質を実現します。翻訳サービスの国際規格 「ISO17100」を2016年2月に取得し、情報セキュリティに関する国際標準規格 ISO27001(ISMS認証)の認証も取得しています。
専門性が高い文書の翻訳も、安心してお任せ下さい。
関連記事