翻訳者登録制度って何?業界・翻訳者に与える影響は?
翻訳者登録制度って何?業界・翻訳者に与える影響は?
2017年4月から、翻訳の業界に新しい制度が立ち上がります。「翻訳者登録制度」です。産業翻訳の第一線で活躍中のプロの翻訳者の方々から、「この制度は何?」とか「これを取らないと仕事がもらえないの?」といった質問を最近頻繁にいただくようになりました。この資格がないと仕事がもらえないというような類のモノではありませんが、少しだけ制度の紹介をしたいと思います。
1.もともとは国際標準規格ISO17100の要求事項から派生してできた制度
ISO17100は、2015年5月に発効された国際標準規格です。翻訳サービスの品質に直接影響を及ぼす翻訳プロセスのあらゆる側面に対する要求事項を規定した国際規格であり、国内でも翻訳サービス提供組織に対する第三者認証が既に始まっています。
日本規格協会のホームページ(2017年3月31日時点)によると26社の翻訳サービスプロバイダ(TSP)が認証を取得しています。
この規格では、翻訳者に対する要求事項(専門的力量)が明確に規定されており、翻訳者の資格と力量が重視されています。つまり、TSPはこれらの要求事項を満たす翻訳者に作業を依頼する必要があるのです。
たとえば、資格の項では、高等教育機関の学位や職務経験年数などの要求事項が記載されており、力量では「翻訳」、「テキスト形成」、「情報収集」、「文化」、「技術」、「ドメイン」に関する力量を持ち合わせていることを証明する必要があります。
主にこの2つの側面を第三者によって評価し、資格を認定する制度が「翻訳者登録制度」です。
2.翻訳者にとってどんなメリットがあるのか
これだけ説明すると、「ISO17100 の認証を取得した翻訳会社」から仕事が来やすくなるのは想像がつきそうですが、それ以外の翻訳者のメリットが非常にわかりにくいものとなっています。
通常、フリーランスの翻訳者は各翻訳会社のトライアルを受験して試験に合格すれば登録翻訳者として仕事をもらえるようになります。ほとんどのケースではこうしたトライアルは無償で受験することになります。
翻訳会社の側から見れば翻訳者のスキルを判断するためにどうしても必要なプロセスなのですが、資格を持っているのであれば、こうした評価は不要になる可能性があり、登録する会社によっては無償のトライアルを受験する必要もなくなる可能性があります。
有資格翻訳者の情報は公表される
また、有資格翻訳者の情報は日本規格協会のWebサイト上に公開されます。実は、これにより翻訳者の選定プロセスを大きく変えてしまう可能性もあり、またそれこそが翻訳者にとって最大のメリットです。
極論を言えば、そのWebサイトから翻訳会社のみならず、発注元からも直接仕事の依頼が来るチャンスがありますし、翻訳会社のトライアルをわざわざ受験しなくても、翻訳会社の側からWebに公開した情報を元にお声がかかるようになるでしょう。
1.4月に大阪、5月に東京で翻訳者登録制度説明会が開催される
どんな試験を受ければよいのか、どこに申請をすればよいのかなどの詳しい情報については、日本規格協会主催の説明会が4月に大阪、5月に東京で開催されることになっています。当社取締役の森口も登壇予定となっておりますので、是非奮ってご参加ください。
1.開催日時・場所
2017年4月17日(月) 13:30~16:10 大阪会場(大阪市中央公会堂 大集会室)
2017年5月31日(水) 13:30~16:10 東京会場(品川区立総合区民会館 きゅりあん 大ホール)
2.共 催
一般財団法人日本規格協会
一般社団法人日本翻訳連盟
特定非営利活動法人日本知的財産翻訳協会
3.定 員 大阪会場:800 名 東京会場:1,000名
4.参加費用 無料
説明会の詳細、および申込みは日本規格協会のホームページ(http://www.jsa.or.jp/wp-content/uploads/rcct-setsumeikai-.pdf)をご参照下さい。
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