翻訳コーディネーションを効率化する3つのポイント
筆者は、翻訳会社で翻訳案件のコーディネーターとして業務を行っております。日々、国内・海外を問わず様々なお客様からご依頼があり、各国の時間帯はそれぞれ異なるため、24時間多くのメールをいただいております。いつどんな案件が来るかが予想できず、なかなかハードな毎日です。そのため、多様な案件にいかに効率的に対応していくかが、仕事を進めていく上で重要な要素になっております。
今回は、筆者が翻訳案件のコーディネーション業務で、どのようなポイントを効率化しているか、また、効率化のためにどのようなツールを利用しているかをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.文書のテンプレート化
- 2.ファイルの集約と配布
- 3.資料の共有方法と動画の活用
- 4.まとめ
文書のテンプレート化
これはどのような仕事においても、最も基本的な項目かと思います。筆者がまず気を付けているのは、外部協力者の方に翻訳作業をお願いする際の文書のテンプレート化です。定期的にご依頼をいただいている案件では、おおよその仕様は共通しているので、ファイルの種類、用途、対象読者、ツール、資料、注意点などを定型文に落とし込み、案件ごとにテンプレート文書を作成しております。テンプレート化においては、どれだけ共通項があるかを見極め、流用していくかがポイントになります。また、テンプレート文書を保存する上で、文書の記録と呼び出しに大変役立つツールがあるのでご紹介します。
それは、「クリップNOTE」という定型文保存ツールです。ツール内で用途に分けて文を保存することができ、保存した定型文をショートカットキーでいつでも瞬時に呼び出すことができるため、大変お世話になっております。
ファイルの集約と配布
時には大型の案件を担当することがあり、大きいものだと、1つの案件で50名を超える翻訳者の方に翻訳を同時にお願いすることがあります。その際に、1人ひとりにファイルを個別にお渡ししていると、就業時間内にコーディネーション作業を終えることは到底できません。
そこで筆者は、全員分のファイルを1つのフォルダにまとめて、そのフォルダを全員に渡すという方法をとりました。その際、どのファイルがどの方の担当ファイルかをお伝えする必要があるので、各ファイル名とその担当者を明記したリストも作成しておきます。このリストと、配布用ファイル(フォルダ)を準備しておけば、1回のメールで全員の方にファイルを配布することができます。ここで注意が必要なのは、個人のお名前は個人情報に当たるためリストには記載せず、代わりにユニークなIDなどをあらかじめ振り分けておき、そのIDを確認してファイルを取得していただきます。この場合、取り間違えがないように取得したファイルをご連絡いただくことも重要です。いざ納品されたら別のファイルでしたということもありえるからです。
資料の共有方法と動画の活用
翻訳時の参照資料に関しても、各翻訳者の方に1つひとつ配るとなると時間と手間がかかってしまうので、こちらも効率化を行いたいポイントです。
そこで、Microsoft SharePointを使用しますと、サイトのURLを翻訳者の方に連絡すれば、そこにアップロードされた資料を各々が確認できるので、配布の手間を省くことができます。また、SharePointでは、WordやExcelといったファイルをアップロードできるだけでなく、Web上に記事を作成し、その記事を直接編集できるので、更新がある場合にわざわざファイルを再アップロードする必要がありません。また、翻訳者の方もファイルのダウンロードが不要となるため、手元に最新の資料を保存する必要がなくなります。
次に、参照資料の作成において効率化をしたい時に検討するのが、インストラクション動画の作成です。一から資料を作成するのは、構成や目次を検討したり、文章でわかりやすく説明を書いたりする必要があるため、どうしても時間がかかるものです。そこで、作業手順を説明しながら実際の作業を行い、その画面を録画して動画を作成することで時間の短縮を図ることもできます。実際に作業する様子を見ていただけるため理解がしやすく、画像の貼り付けなどの編集作業も必要ありません。近年では様々なジャンルのインストラクション動画が作成されており、指示書だけでなく普段の業務においても、動画を活用できる可能性があると思います。(ただ、文書の方が早く正確に理解ができる、動画を最初から最後まで見るのに時間がかかるといった声もあるので、文書と動画を組み合わせるという選択肢も必要かもしれません。)
まとめ
今回は翻訳のコーディネーション業務について、工夫次第で効率化ができるポイントをご紹介いたしました。効率化にゴールはなく、状況や技術は日々変わるので、最新の状況に常にアンテナを張り、工夫することが必要かと思います。ツールやアプリはどんどん進化していき、操作方法や仕組みを覚えるのが大変な時もありますが、今までなかったような便利な機能に出会える可能性もあるので、常に勉強し、改善する姿勢を大事にしていきたいと思います。
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