翻訳に必要な調査力
翻訳で必要とされる基本スキルといえば、語学力、専門知識、調査力、翻訳力です。今回はそのうちの調査力について取り上げたいと思います。
翻訳は単に原文を対象言語で読めるようにすればいいということではありません。原文と同じ内容の翻訳文章にするために、対象の業界や企業で現在使用されている用語、固有名詞、専門技術などを調査して、原文の内容にあった文章に翻訳できる調査力が必要です。
用語の調査について
辞書で定義されている日本語をそのまま当てはめているだけでは、実際の意味を正確に伝えることができない場合があります。原文が伝える内容を理解し、適切な用語や表現を使用し、読みやすい文章に翻訳するようにします。
用語集が提供されている場合はその用語を使用しますが、用語集にない新規の用語がある場合は、自分で適切な訳文を付けることになります。翻訳内容の専門分野で一般的に使用されている用語を調べ、原文の意図に合った用語になるようにします。
英日翻訳の場合、用語を安易にカタカナでごまかすと、カタカナだらけの読みづらい文章になってしまいますのでご注意ください。翻訳クライアントにとって、また読み手に取って、最良の訳語とは何かを検討してみましょう。
固有名詞の調査について
製品名、人名、役職名、企業名、文書名などの固有名詞の正式名称を翻訳時に調査していますか? Webをサーチすれば既に翻訳されているサイトが見つかるかもしれません。そのサイトの内容が信頼性のないものであったとしても参考にはなります。まずは調査してみて、分からない場合は申し送りするようにしましょう。
専門技術の調査について
クライアントのWebサイトはもちろんのこと、業界の競合製品や関連記事を調べてみましょう。また、専門知識や業界用語を勉強しておくことは、翻訳を行ううえで大変重要です。専門分野の最新知識を高めるために、業界のニュースやリーディングカンパニーのサイトを見て日々知識をアップデートしておくことをお勧めします。
申し送り(翻訳コメント)について
調べてもわからないことがあった場合は申し送りをしましょう。固有名詞は、言葉通りに訳すだけではなく、正確性が求められます。まず調査を行い、わからなかった場合は仮訳をしてその訳語にした理由を添えて申し送りましょう。わからないことをそのままにしておくと、翻訳会社およびクライアントからの信用を失ってしまうことになるかもしれません。
翻訳の申し送りは、非常に重要です。原文ミス、固有名詞、新規用語/不明な用語、新規UI、解釈できない内容などは、理由付けて簡潔に申し送りをしましょう。申し送りを見るだけで、翻訳者の資質や信頼度がある程度わかりますので、翻訳と同様に丁寧に作業することが必要です。全体に影響を与えるような疑問点、問題、ゆれている用語などが出現した場合は、納品時に申し送りするのではなく、随時問合せしたほうが良い場合があります。対応については担当者に確認するようにしましょう。
最後に、私が調査する際に使っている、検索オプションをご紹介します。
内容 | 例 | 説明 |
単語にスペースを入れて検索する | AAA BBB | 「AAA」と「BBB」に関連するサイトを検 索します。 |
「+」や「AND」で単語を区切る | AAA + BBB | 「AAA」と「BBB」が確実に含まれるサイ トを検索します。 |
完全一致で検索する | "AAA" | 完全一致で検索します。 |
用語の意味を確認する | AAAとは | 「AAA」の意味を調べます。 |
ワイルドカードで検索 する | "新機能*ご紹介します" | 「新機能」で始まり、その間に任意のテキ ストが入り「ご紹介します」に続く文章を検索できます。 |
キーワードを検索結果 から除外する | AAA -BBB | 「AAA」の情報を検索しつつ、「BBB」の内 容を除外します。 |
まとめ
いかがだったでしょうか?
原文が伝える内容を翻訳文章にするためには、専門知識や業界用語などを適切に使用する「調査力」が必要不可欠です。
調査をしてみて分からない場合は申し送りや問い合わせをし、正確性の高い訳文を目指しましょう。
KIのサービス
川村インターナショナルでは、翻訳の国際規格であるISO 17100の認証を取得しており、国際規格に基づいた翻訳サービスを提供しています。
対応分野は、IT・ローカリゼーション、医療機器・医薬、金融・IR・法務、観光・インバウンド、製造業、SAP 関連文書など。お客様の業種・専門分野に応じて最適な翻訳者が対応いたします。翻訳の品質、機械翻訳の活用、翻訳フローの効率化など、お客様のあらゆる問題について提案させていただきます。翻訳依頼・見積もり依頼はこちらのフォームから、お気軽にお問い合わせください。
関連記事