翻訳会社についての豆知識 ~よくある質問② 機械翻訳のつかいどき~
翻訳会社に翻訳を依頼したい。参考資料があるとどうなるのだろう?翻訳メモリを活用すべきタイミングは?
機械翻訳を使って翻訳会社に翻訳を依頼したい。機械翻訳の使い時っていつだろう?
翻訳の依頼を検討している人も、すでに依頼している人も必見!お客様の疑問を解消する「翻訳会社についての豆知識シリーズ」第二弾です。
今回の記事で回答する質問は以下の2点です。気になる方はぜひご一読ください!
目次[非表示]
その1. 過去の案件などの参考資料があれば金額は安くなりますか?
回答:
ケースバイケースになりますが、金額を安くすることは可能です。
お客様から参考資料をご支給いただく場合、翻訳者はその情報を参照しながら作業を進めます。つまり、参考資料内の表現と整合をとることができるため、参考資料がない場合と比べると、お客様の希望品質に近づけることができます。
しかし、金額が安くなるかは案件の仕様によって異なります。
参考資料内にそのまま流用できる表現があったり、類似した表現があったりすると、一見作業工数が減り、その分の金額が安くなるように思えるかもしれません。
しかし、翻訳者にとっては参照しなければならない資料が増えることで、作業負荷が増すことにも繋がる可能性があります。したがって、参考資料を支給いただいても、残念ながら一律に金額が安くなるわけではありません。しかしながら作業指示の方法や、旧版をどのくらい流用できるかなどの状況より、金額を安くすることは可能です。
それでは、見積もり金額を安くできる具体的な方法を確認してみましょう。
ケース1. 流用する箇所を指定し、それらの箇所を翻訳対象外にする
たとえば、20ページのドキュメントのうち、「5ページ目の2段落目」と「12ページ目の3~4段落目」は参考資料の訳文をそのまま流用できるとします。
この場合、原文における流用してほしい範囲と、参考資料で該当する場所を具体的にご指示いただければ、該当箇所を翻訳対象外にすることで金額を安くすることができます。ただし、翻訳会社側で流用箇所を該当部分からコピーして反映する作業を行う場合、その費用が別途発生する可能性があります。それでも、流用箇所が多ければ、金額をその分抑えることができます。
ケース2. 流用箇所が多いので、翻訳メモリを作成して作業する
たとえば、過去の資料の改訂版などで、「翻訳対象のうちの3~4割ほど」は既存資料の訳文をそのまま流用できるとします。
この場合、翻訳メモリと呼ばれる対訳形式の翻訳データベースを先に作成し、作成した翻訳メモリを使って翻訳作業を行うことで、翻訳費用を安くすることができます。既存資料とまったく同じ箇所だけでなく、類似箇所も含めて流用することが可能なため、既存訳との整合性をとることも可能です。品質面、コスト面を含め、既存資料を十分に有効活用できます。
翻訳メモリの作成費用が別途かかりますが、流用箇所が多ければ多いほど、金額を抑えることができます。
その2. 機械翻訳サービスを活用するタイミングを教えてください
回答:
品質よりも価格・納期を優先したい案件で有用です。
近年、人工知能(AI)を使った機械翻訳、すなわちニューラルネットワーク機械翻訳が登場し、機械翻訳の質は飛躍的に向上しました。そのため、これまでは使ったことがなかったような、Google翻訳やDeepL等の機械翻訳を翻訳業務に使用するようになった方もいるかもしれません。
翻訳会社でも、機械翻訳を活用したサービスを提供しているのが昨今の流れです。しかし、新しい技術が生み出される一方で「どのようなときに機械翻訳サービスを使えばいいのかよく分からない」「機械翻訳の使い時を教えてほしい」という質問をよくいただきます。
まず知っておきたいことは、機械翻訳のメリットが価格と納期であり、価格と納期のメリットを生かすために、品質がトレードオフになるということです。そのため機械翻訳は、他言語で記述された社内資料の内容確認目的や、訳出後に社内で推敲作業をするための下訳の目的で使用されることが多いです。このような目的で使用する場合、即時性のある機械翻訳は非常に有効です。
さらに、ここ最近では機械翻訳への注目が集まっていることもあり、情報セキュリティに配慮して機械翻訳をお客様側で活用できる製品(たとえば、弊社の『みんなの自動翻訳』)や、機械翻訳での出力結果に手直しを加えて提供するサービス(ポストエディットサービス)が提供されています。ポストエディットとは機械翻訳の出力結果を人が修正して、翻訳者が翻訳した場合の品質に近づける作業のことです。
機械翻訳だけでは心許ないので、上記の「機械翻訳+ポストエディット」(MT+PE)サービスを希望する、というお客様は年々増加傾向にあります。しかし、ポストエディットも人間が手直しをするとはいえ、機械翻訳を活用して翻訳をすすめるという性質上、現状の機械翻訳の品質では品質のトレードオフが発生します。
ポストエディットでは、機械で出力した訳文のエラーを修正できますが、いくら人間が編集しても機械翻訳らしい直訳的な部分、不自然な部分が残ってしまいます。これは、機械翻訳による大まかな訳文が提供された後に、その訳文をベースに後編集を加えていくためです。
また、ポストエディットでは人手翻訳のように、専門性や分野に特化し、対象ドキュメントの性質を考慮し、統一感の取れた質の高い訳出は期待できません。そのため、販促用のカタログやカスタマー向けのWebサイトの翻訳など、多くの人目に触れるようなドキュメントには機械翻訳サービスは適していません。
ポストエディットが適するのは、内部向けの資料(会議資料、稟議書、社内マニュアルなど)を訳出する場合や、他社製品や契約書などの内容を理解するために訳出する場合です。対外的な用途であれば人手による翻訳が適する一方で、対内的な用途であれば、費用面や納期面でメリットのある機械翻訳を活用することで、それぞれの条件にあったサービスを利用することができます。
上記のように、翻訳対象となるドキュメントの種類、および使用用途を考慮することで、機械翻訳をうまく活用していただけると思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。お客様からよくいただく、参考資料と機械翻訳に関する質問の回答をまとめてみました。翻訳をご検討いただく際のお役に立てればうれしいです。
本シリーズでは、過去にもよくある質問に回答しております。過去の記事はこちらからご覧ください。
川村インターナショナルの翻訳サービス
すべてのコンテンツ、文書に対してポストエディットが適しているわけではありませんが、ローカリゼーションを中心にマーケティング翻訳、マスメディア翻訳など、ポストエディットの需要は確実に高まってきています。
品質/納期/コストなどの要素のうち、どれを優先するべきかによって、一から人間が翻訳する人手翻訳と、ポストエディットを使い分けることが、今後重要になってきそうです。
川村インターナショナルでは、お客様の抱える課題やニーズに応じて、経験豊富なスタッフが最適なソリューションを提案いたします。翻訳やローカライズに関する悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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