インバウンド需要は本当にあるの?
インバウンドという言葉が流行語対象にノミネートされて、はや三年。東京オリンピックを1年後に控え、海外からの訪日観光客は増加の一方を辿っています。
それに伴い「インバウンド需要」という言葉をよく耳にするようになりましたが、実際のところ「インバウンド需要」は伸びているのでしょうか?
今回は翻訳サービスに焦点を置き、インバウンド需要の実態を調べてみました。
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2018年は、外国人旅行者が過去最高の3,100万人に!
2018年の訪日外国人旅行者数は、2017年の2,869万人から大幅に伸び、過去最高の3,100万人を超える数値となりました。(JNTO訪日観光者統計より)
外国人旅行者の数が年々増加するにつれ、「インバウンド」という言葉も人々の耳にだいぶ馴染んできたように思えます。
日本では2020年にオリンピックを控えており、観光庁は訪日外国人旅行者数の数を4,000万人に増やすことを目標として掲げています。(訪日外国人旅行者の受入環境整備より)国を挙げての政策によって誘致された海外からの旅行者は、交通や宿泊など旅行業界はもちろんのこと、小売、飲食、レジャー施設、不動産など、様々な業界にとって大きなビジネスチャンスを生み出すと期待されています。
いまさら聞けない、インバウンドについておさらいを
訪日外国人旅行者が増えるにつれ、頻繁に耳にするようになった「インバウンド」という言葉。インバウンド(inbound)はもともと、「外から中へ入る、内向きの」といった語源を持つ形容詞です。つまり、「インバウンド観光客」や「インバウンド需要」、「インバウンド消費」といった言葉は、外部(国外)から日本国内に向けての観光、需要、消費という意味で使われていると捉えるとイメージしやすいでしょう。
「インバウンド」は、2013年に訪日外国人旅行者が 1,000万人を超えたあたりから使われるようになったようです。最近では、インバウンド旅行者なんて呼び方も耳にするようになりました。
インバウンドと翻訳・通訳業界のかかわり
さて、様々な業界にとって影響力の大きいインバウンド需要は、翻訳や通訳などの言語サービスにとっても大きな影響を及ぼします。
観光業界やレジャー施設、レストランや居酒屋などでは、多くの外国人旅行者に訪れてもらうために、「おもてなし」の心を燃やして準備を進めているようです。こうしたサービス業にとって準備をしなくてはならないものが「言葉」です。訪れた旅行者のほとんどは、日本語に馴染みがないことが予想されます。受け入れる側としては、スムーズに接客や対応を行うために、言葉の壁をなくす準備を行っているのです。
その流れの中で、日本語の掲示物やメニュー、アナウンスを多言語化するための翻訳依頼が翻訳会社に寄せられています。
インバウンド関連の翻訳依頼は増加傾向に!
それでは、実際にインバウンド関連の翻訳案件は増えているのでしょうか?多言語翻訳サービスを展開する川村インターナショナルが、過去の実績を調べてみました。
インバウンド関連の翻訳案件を2017年と2018年で比較してみると、2018年の売上高は2017年の売上高の3.59倍になっていました。
そのうち、言語方向を日→英(和文英訳)に絞ると、売上高は、1.82倍に増えており、日本語からアジア言語への翻訳に絞ると、なんと8.02倍に増えていることがわかりました。
過去の実績から、インバウンド関連分野においては、翻訳の需要は対象言語を問わず全体的に増加しており、特にアジア言語への翻訳の需要が伸びていることが分かりました。
近年では、中国人観光客をはじめとするアジア諸国からの旅行者数が顕著に増えています。その数の増加に伴って、インバウンド分野では、アジアからの外国人旅行者が日本で快適に過ごせるように、多言語に対応する環境づくりに力を入れていることが推察されます。
翻訳コンテンツの内訳は?
次に、川村インターナショナルでご依頼をいただいたインバウンド関連案件のうち、翻訳されるコンテンツの種類の内訳を調べてみました。
内訳をみると、観光地のパンフレットや広告など観光系の翻訳が54.7%、交通機関のチラシや乗り方ガイドの翻訳など交通系の翻訳が21.2%でした。宿泊施設や飲食、小売関係の翻訳のご依頼の割合は比較的少ないことがわかりました。また、稀にスマートフォンやタブレット上で使用する通訳・翻訳アプリなどのUI(ユーザーインターフェイス)翻訳のお問い合わせをいただくこともあります。
何語に翻訳されているの?
次に、インバウンド関連案件では、具体的に日本語から何語に翻訳されているかを調べてみました。
過去2年間の受注量をもとにデータを集計したところ、全部で14言語に翻訳されていることが分かりました。
言語の内訳を見ると、世界共通言語である英語は46.96%を占め、14言語中1位となりました。次に多かったのが中国語で32.18%。それに続くのが、タイ語(9.79%)と韓国語(5.95%)でした。
アジア言語でまとめると、51.13%と全体の半数を占めており、英語を超える割合になっています。
インバウンド案件での機械翻訳の依頼は?
急激に依頼の増えているインバウンド関連案件ですが、どのように翻訳されているのでしょうか。
川村インターナショナルでは通常の人手翻訳サービスに加えて機械翻訳サービス、およびMTPE(機械翻訳+ポストエディット)サービスを提供しています。コスト削減や納期短縮を実現できるため、機械翻訳およびMTPEサービスは多くの注目を集めています。これらのサービスがインバウンド関連案件でも利用されているか調べてみました。
なんと0件。インバウンド関連の文書を機械翻訳にかけてポストエディットをするケースはありませんでした。こちらの記事でも解説していますが、MT+PEサービスでは、「直訳調」の翻訳が残ってしまうことが多く、多くの人の目に触れ、かつ自然な文章であることが求められるインバウンド関連案件では、人手翻訳を超える品質を出すことはまだ難しいのが現状です。
機械翻訳の精度があがっているとはいえ、インバウンド関連案件では、MTPEサービスではなく人手翻訳が好ましいと考えるお客様がほとんどであることが分かりました。翻訳したものは海外からの大切なお客様を迎えるための情報になるため、コストや時間をかけてでも精度や品質には万全を期したい、と考えるのはのは当然のことですね。
まとめ
今回は、インバウンド観光客の増加と翻訳に対する需要についての調査結果をご紹介いたしました。まとめとしては、以下のとおりになります。
- インバウンド観光客の増加とともに、翻訳の需要も増加している
- 観光や交通など旅行関係の翻訳が多い
- アジア言語では中国語の翻訳ボリュームがダントツ一位
- アジア言語全体の翻訳ボリュームは英語を上回る
- インバウンド系の翻訳はコストがかかっても人手翻訳が好まれる
多言語インバウンド翻訳に関しても、川村インターナショナルでは豊富な対応実績がございます。
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