翻訳を効率的に行う秘訣~CATツール Phrase TMS編~
「みんなの自動翻訳@KI(商用版)」(下記参照)にも連携している翻訳支援ツール(CATツール)。IT翻訳の作業形態は翻訳支援ツールの登場より大きく変わり、翻訳の生産性は従来と比べて大幅に向上し、翻訳コストは削減されました。
みんなの自動翻訳@KI(商用版):Powered by NICT「翻訳バンク®」の枠組みを活用した国産機械翻訳エンジン。分野特化型エンジンが特長(汎用/特許/ライフサイエンス/IT/金融)。ユーザー数無制限。 |
今回は、現在普及しているCATツールのタイプ「クラウドベース」「ローカルベース」の違い、そして数ある翻訳支援ツールの中でも「クラウドベース」に分類される「Phrase TMS」(旧称:Memsource)についてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.クラウドベースとローカルベースの違い
- 2.ローカルベース、クラウドベース、それぞれのメリット/デメリット
- 3.Phrase TMS とは
- 3.1.作業プロセスの自動化 ★
- 3.2.データの一元管理(TM・TBの共有)★
- 3.3.Web環境での「ウェブ型エディタ」またはローカル環境での「デスクトップ型エディタ」を無料で利用可能 ★
- 3.4.シンプルなUIで、動きが軽い
- 3.5.モバイルアプリ ★
- 3.6.QAチェック
- 3.7.機械翻訳の活用
- 3.8.AIを利用した機能
- 4.おわりに
- 5.翻訳を効率的に行う秘訣 - ブログまとめ
クラウドベースとローカルベースの違い
数年前まで翻訳支援ツールと言えば、SDL Tradosといったローカルベースのものが主流でしたが、ここ数年の間でクラウドベースの翻訳支援ツールが勢いをもって普及してきました。Phrase TMS、XTM、memoQ、Across、SDL WorldServerなどのクラウドベースの翻訳ツールと機械翻訳を組み合わせて使用する作業形態は、今や主流となりつつあります。
さて、その「ローカルベース」と「クラウドベース」の翻訳支援ツールにはどのような違いがあるのでしょうか?
ローカルベースの翻訳支援ツールでは、アプリケーションを使用するPCにインストールしてしまえば、原則ネット接続がなくても、自分のPC環境でツールを使用して作業を行うことができます。翻訳ファイルや翻訳メモリ、用語集もローカルベースで一から作成することができるので、外部とのファイルの受け渡しがない限りはローカルベースで作業が完結できます。
一方、クラウドベースの翻訳支援ツールでは、クラウド上に保存された翻訳ファイルやメモリにアクセスをして作業を行いますので、原則ネット接続が必須となります。クラウドベースの翻訳支援ツールの中にも、エディタそのものがWebブラウザ上に存在するタイプと、ソフトウェアをローカル環境にダウンロードし、アプリケーション上のエディタを使用して翻訳を行うタイプがありますので、タイプによってはネット接続がないと全く作業ができなくなるものもあります。
つまり、ローカルベースとクラウドベースのCATツールの大きな違いは、作業環境にあるといえます。
ローカルベース、クラウドベース、それぞれのメリット/デメリット
それでは、それぞれのタイプの翻訳支援ツールを使用することによって得るメリットやデメリットは何でしょう?
ローカルベースの翻訳支援ツールを使用することによって得られるメリット/デメリットは主に以下にまとめられます。
メリット
- インターネット環境がなくても作業ができる
- ネット接続が必須でないため、外的要因で作業が中断されることが滅多になく、作業環境が安定している
デメリット
- アプリケーションの購入にお金がかかり、往々にして高価である
- 複数名で対応する翻訳案件の場合、翻訳メモリや用語集を自動で最新版に維持できない
一方で、クラウドベースの翻訳支援ツールを使用することによって得られるメリット/デメリットは以下にまとめられます。
メリット
- アプリケーションの購入費がローカルベースに比べて安価
- ブラウザ型のものは、翻訳会社や翻訳の依頼元からライセンスを付与してもらえばツールを使用することができるので、翻訳者側でツール使用料を負担する必要がない
- 複数名で対応する翻訳案件の場合、作業中でもメモリや用語集を最新版に更新してリアルタイムに共有できる
デメリット
- インターネット依存なので、ネット接続ができなくなったり、サーバーが落ちてしまったりしたときには作業ができなくなる
- メンテナンスが随時入ることがあるため、作業が中断される
オンラインで作業ができるか、オフラインで作業ができるか、というポイントがそれぞれのメリットとデメリットを生み出しているのがわかりますね。
どちらの利点をとりたいかは、どの要素を重視するかによって変わってきそうです。
Phrase TMS とは
ここまでで、クラウドベースとローカルベースの翻訳支援ツールの違いを大まかに認識していただけたかと思います。
それでは、翻訳支援ツール「Phrase TMS」をクラウドベースのツールの一例として取り上げ、クラウドベースのツールで得られるメリットを具体的に紹介します。
Phrase TMSは、2010年にチェコで発売されたクラウドベースの翻訳支援ツールです。翻訳支援ツールとして基本的な機能を備えつつ、使いやすく直観的な操作、動作の軽さ、AI機能の導入のなどにより、シェアを伸ばしています。
Phrase TMSを使用することによって得られるメリットは以下のとおりです。赤い星印(★)がついている項目は、クラウドベースのツールならでは得られるメリットです。
作業プロセスの自動化 ★
翻訳から翻訳チェックなど各作業フローについて、PM(プロジェクトマネジャー)を介さずに自動的に進めることができます。また、PMは各作業工程の進行状況をリアルタイムに把握できます。
データの一元管理(TM・TBの共有)★
TM(翻訳メモリ)やTB(用語集)をオンラインで共有できるため、作業者間で最新の用語や訳文を共有できます。PMは用語変更や訳の変更を迅速かつ効率的に行うことができます。複数の翻訳者が関わる大規模プロジェクトでは特に有用です。
Web環境での「ウェブ型エディタ」またはローカル環境での「デスクトップ型エディタ」を無料で利用可能 ★
翻訳者は、ツールのライセンスを購入して、ソフトウエアをインストールする必要がありません。従来であればツールを保有していないと発注ができない翻訳案件もありましたが、PMはツールの制約なしに、作業者を確保することができます。
シンプルなUIで、動きが軽い
使いやすく直観的なUIで、すぐに操作方法を習得できるため、新しいツールを習得するまでの作業効率の低下を気にする必要がありません。動作が軽く、効率的に作業を進めることができます。
モバイルアプリ ★
モバイルアプリが提供されており、場所を問わず作業の進捗を確認できます。
QAチェック
訳漏れ、タグの不一致、スタイルミス(正規表現を利用)などをチェックできます。
機械翻訳の活用
複数の機械翻訳エンジンを利用できます。翻訳精度が向上した機械翻訳エンジンは、今後確実に利用が増えていくことが予想されます。
AIを利用した機能
翻訳不要箇所の特定をするAIを活用した機能が備わっています。
このように、Phrase TMSは翻訳支援ツールの基本機能を備えているだけでなく、AIを活用した機能や機械翻訳の利用など、新しい機能が積極的に開発・追加されているツールです。
需要が伸びるにつれて自動化と効率化がより求められる翻訳業界では、このように各社が競い合って新しい技術を取り入れ、より使いやすく効率的なツールが生み出されています。
おわりに
いかがでしたでしょうか。翻訳支援ツールにはクラウドベースのものとローカルベースのものが存在し、それぞれに良い点があることがお分かりいただけたと思います。
翻訳に求められるものは「高い品質」だけではなくなってきました。グローバル化が進むにつれ要求されるスピード感にも応えるためには、新しい技術を取り込んだ翻訳支援ツールを駆使することが必須となっているといえるでしょう。
翻訳を効率的に行う秘訣 - ブログまとめ
memoQや、XTMなどの翻訳作業を効率化するCATツールや、校正ツールのご紹介や役立つTIPSを集めた人気ブログ9記事をまとめました。用語集の作り方から、レイアウトまで効率化につながる秘訣を紹介しています。ぜひご覧ください。
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