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TIPS! 翻訳時の注意点 中国語~観光翻訳・インバウンド翻訳編~

「爆買い」という言葉が流行語大賞を受賞してはや三年。
以前に比べると「爆買い」の勢いは落ち着いたようですが、中国からの観光客自体はまだまだ増加傾向にあります。
中国本土だけでなく台湾や香港でも日本旅行の人気は高く、2017年にはこの三地域(中国、台湾、香港)からの観光客が1400万人を突破しました。
主要なターミナル駅や観光スポットに行くと、高い割合で中国語に翻訳された案内図や地図が設置されており、お土産やなどでも中国語版のカタログやメニューが置かれるようになりました。
しかし、この「観光資料」、中国語に翻訳する際にはちょっと注意が必要です。


「地名」や「商品名」はどう訳すべき?

皆さんも一度は目にしたことがあると思いますが、「観光資料」には、必ず、地名や人名、さらには商品名などの「固有名詞」が登場します。
そもそも、その場所を訪れる観光客や買い物客に情報を提供するための資料なので、当然と言えば当然ですが、実はこの固有名詞こそが、観光翻訳(=インバウンド翻訳)で最も気を付けなければならないポイントなのです。


そもそも固有名詞って?
日本語には、その普通名詞と固有名詞という二つの名詞分類が存在します。(※集合名詞や物質名詞などは除く。)
モノや事象など具体的な対象を指すことばを「普通名詞」、他に似たものから区別するために、その対象のみに与えられたことばを「固有名詞」と、区別されるのが一般的です。
要するに一般的に目にするものは普通名詞で、その中でも特に決まった呼び方を持つものは固有名詞ということですね。


固有名詞と定訳
では、なぜ固有名詞に気をつけなければならないのでしょうか?
一般的に、固有名詞は日本語のみで定められており、外国語の定訳(会社や国により定められた特定の訳語)を持たないことが少なくありません。
中には、翻訳者がそれぞれ主観的に翻訳していくうちに、さまざまな訳し方が存在してしまっている地名や商品名もあるようです。
本来、定訳がなかったものも、その場所やサービスが現地で広まっていくに連れて、いつの間にか定訳化したものもあります。
いずれにせよ、定訳が存在しない場合には、その場所や商品を適切に説明するための翻訳が必要になります。

中国語では、このような「固有名詞」を表現する際に、音訳と意訳そして自体変換という三種類の方法が用いられます。

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音訳

原文の発音を、中国語で再現し、漢字で表記する方法です。
中国語は声調言語(音をベースと言語)のため、元の言葉と同じ発音を持つ中国語で表現することがあります。

例:

  • コカ・コーラ = 可口可乐
  • ポカリスエット = 宝矿力水特

意訳

原文の意味に基づいて、中国語の漢字で表記する方法です。
あくまでも元の言葉が持つ意味に基づいて訳出するため、読み方としては、元の発音と全く異なります。

例:

  • ユニクロ = 优衣库(「優れた衣服の倉庫」の意味)
  • コンビニ = 便利店(「便利なお店」の意味)
  • スチュワーデス = 空中小姐(空姐)(「空のお姉さん」の意味)
  • 白い恋人 = 白色恋人(定訳「白色恋人饼干」と表記されることが多い。)

字体変換

日本語の漢字を中国語で使用される漢字に変換して表記する方法です。
同じ漢字とはいえ、日本語と中国語では使われる文字が違います。
また、中国語でも簡体字と繁体字でも文字が異なるため、注意が必要です。

例:

  • 東京 = 东京
  • 渋谷 = 涩谷
  • 鎌倉 = 镰仓

まとめ:固有名詞を適切に翻訳するためには?

固有名詞を適切に翻訳し、有効な観光資料を制作するためには、「原文言語に精通したネイティブ翻訳者に依頼する」だけでは不十分です。
公式Webサイト、行政機関、教育機関のWebサイトによる定訳調査は最低限必要ですが、現地での流通名称までキャッチアップして最終的に掲載する訳語を決定するのが理想です。
観光分野の知識はもちろん、対象(場所・商品)に関する知識やマーケット事情に精通しているプロフェッショナルの助けが必要です。


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前田耕二

前田耕二

KI Hong Kong, Limited 取締役。 川村インターナショナル香港現地法人の代表として2012年より香港にて勤務。 中国語および東南アジア言語のローカリゼーション業務に従事。

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