医薬品・医療機器 翻訳サービス:翻訳に必要な医学的知識 No.20 | 循環器疾患(Cardiovascular System)の主訴 (1)
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動悸(Palpitation)
呼吸困難が呼吸を意識する状態であるのと同様、動悸(palpitation)は、本来は意識しない心臓の鼓動を意識する状態と定義できる。動悸は、疼痛(pain)や息苦しさ(dyspnea, shortness of breath)と同じように、よくある訴えでもある。動悸は、頻脈(tachycardia)を伴うことが多く、心拍数はしばしば120/分以上となる。心房細動(atrial fibrillation: AF)では脈拍は不規則で(=不整脈(arrhythmia))、脈の強さ一律ではなく、強弱が顕著となる。 動悸は、生死に関わる重篤な心疾患が原因の場合もあるが、ヒステリーや不安(anxiety)など、心理的要素が関与している場合も多い。動悸の原因が、器質的疾患(organic disease)か機能的疾患(functional disease)かの鑑別は、重要であるが、ポイントを押さえた詳細な病歴聴取(history taking)が、この場合も診断の鍵となる。
1) 原因(Etiology)
心疾患(cardiac disease) :約40%
上室性頻脈(supra-ventricular tachycardia: SVT)
発作性心房性頻脈(paroxysmal atrial tachycardia: PAT)
心房細動(atrial fibrillation: AF)
精神的疾患(心因性): 約30%
不安神経症
ヒステリー
詐病(factitious disease)
うつ病(depression)
その他:約10%
甲状腺機能亢進症(thyrotoxicosis, Basedow’s disease)
貧血(anemia)
原因不明:約20%
このうち、①と③は器質的疾患に、➁と④は機能的疾患に、それぞれ対応する。
以下の⇒以降は、動悸を訴える患者さんで、見逃してはならない疾患である。
胸痛(chest pain)を伴う場合⇒
心筋梗塞(myocardial infarction)
失神(syncope)もしくは意識障害(presyncope)を伴う場合⇒
高度の不整脈(cardiac arrhythmia)
心臓弁膜症(valvular heart disease)
大動脈弁狭窄(aortic stenosis)
心筋症(cardiomyopathy)
完全房室ブロック(Adams-Stokes症候群)でも失神することはあるが、房室ブロックでは除脈(bradycardia)となり心拍数は20/分以下となる。
呼吸困難を伴う場合⇒
心臓弁膜症(僧房弁狭窄(mitral stenosis)など)
肺血栓塞栓症(pulmonary thrombo-embolism)
急性左心不全(肺水腫(pulmonary edema))
発作性夜間呼吸困難(paroxysmal nocturnal dyspnea, PND)
起坐呼吸(orthopnea)は、僧房弁狭窄症(mitral stenosis)などによる急性肺水腫(acute pulmonary edema)で見られる特徴的症状である。
2) 鑑別に役立つ問診の実際
動悸の鑑別診断では、正確な病歴聴取が重要である。以下、問診の要点を述べる。
動悸が数秒で消失する場合⇒上室性頻脈:supra-ventricular tachycardia SVT(例:発作性心房細動:paroxysmal atrial fibrillation)
コーヒーや紅茶(カフェイン)で動悸が起きる⇒上室性頻脈発作(SVT)
息こらえをしたら(breath holding)動悸が消失⇒上室性頻脈発作(SVT)
心筋梗塞の既往がある⇒
心室性頻脈(ventricular tachycardia: VT)の可能性がある
心室性頻脈は急死(急性心臓死:sudden cardiac death)の原因となる
動悸の持続時間が
1分以上⇒心房細動
数日以上⇒心房細動のこともあるが、心因性(不安、うつ状態など)の可能性が高い
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