多言語翻訳 – 神秘のアラビア語 編
多言語翻訳 – 神秘のアラビア語 編
企業のグローバル化が進むにつれ、多言語翻訳のニーズも高まりつつあります。
多言語翻訳の対象言語には中国語、韓国語、タイ語、スペイン語といったメジャーな言語から、マケドニア語、チェコ語、ベトナム語などマイナーな言語まで多岐にわたります。その中でも、今回の記事では、需要が伸びつつあるアラビア語についてご紹介します。
「アラビア語」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。アラビアンナイトの世界のような砂漠の夕焼けや夕陽に映えるモスクを想像されるかもしれません。あるいは、単に右から左に書くミミズのような文字を思い浮かべるかもしれません。
それらのイメージは大体が正解です。アラビア語はこのような文字で表記され、右から左へと読みます。
そして、アラビアンナイトの舞台となったアラビア半島を中心とした中東世界で主に話されている言語です。
日本ではアラビア語を目にする機会が少なく、一般的な大学でも履修できることがほとんどないため、アラビア語をマイナー言語と考えられている人も多いかもしれません。
しかし、実は世界で3番目に多くの国や地域で使用されており、その話者の数も約2億3500万人*に上ります。(*出典:ウィキペディア)
さらに、アラビア語は英語、フランス語、中国語、ロシア語、スペイン語に並んで国連の公用語として規定されています。日本ではなじみがないアラビア語ですが、世界規模で見ると非常に話者人口の高い言語なのです。そのため、翻訳の需要も伸び続けています。
それでは、そのアラビア語、具体的にはどこで話されているのでしょうか?
アラビア語を公用語とする国はサウジアラビア、UAE、カタール、イラク、パレスチナ、ヨルダン、イエメンといったいわゆる中東地域から、エジプト、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、スーダンといった北アフリカにわたります。ちなみにですが、イランではペルシャ語が使用されますが、ペルシャ文字はアラビア文字と非常に似通っています。
日本語が北から南にかけて異なる方言で話されているように、アラビア語も地域によって独特の方言を持ち、場合によっては同じアラビア語話者でも、方言の違いによりほとんど言葉を理解できないことがあるそうです。
例えば、モロッコなどでは、アラビア語より前にこの地方で話されていたベルベル語と、かつてフランスの植民地となった歴史の経緯でフランス語の影響を色濃く受けた結果、ほかの国々や地域とはかけ離れた方言が話されるそうです。これらのような、地域によって異なる方言(=話し言葉)をアーンミーヤと呼びます。
では、方言がある以上「アラビア語話者」たちは意思疎通をとることはできないのでしょうか?
そんなことはありません。これまで方言(口語アラビア語:アーンミーヤ)を紹介しましたが、アーンミーヤの他にもアラビア語には文語(正規アラビア語)が存在し、この正規アラビア語がアラブ諸国の共通語となっています。正規アラビア語は、フスハーと呼ばれ、新聞や書籍、学術論文やニュースなど、公的な場で使用されます。フスハーは、イスラム教の古典であるコーランが書かれた言語でもあります。学校で学ぶアラビア語もフスハーであるため、一般的なアラビア語話者はフスハーを学び、フスハーを理解することができます。しかし、フスハーはあくまでも「公的な場」で使用される言葉であるため、日常会話ではほとんど使われないそうです。
アラビア語の翻訳をする場合、ほとんどがフスハーの翻訳になるかと思いますが、場合によってはエジプト方言などの方言が使用されることもあると思いますので、成果物の使用されるシーンや地域をしっかりと把握することが必要となりそうですね。
さて、一見なじみのなさそうなアラビア語ですが、実は私たちが日常生活で使う言葉の中に潜んでいるのです。
例えば「アルコール」「アルカリ」「アルゴリズム」といった言葉はアラビア語が起源であると考えられています。アラビア語で「アル」は定冠詞(英語でいう「The」)にあたるため、アラビア語が起源の言葉をなんとなく推測できそうです。
このようなアラビア語を起源とする言葉は、科学分野に多いとされています。これは、現在のイラクの首都、バグダードにかつて存在したアッバース朝の「知恵の館」に見えるように、中世から近代の中東は科学面で大きく発展し、西洋諸国に大きな影響を及ぼしたためです。このように、アラビア語を起源とする言葉はたくさん存在し、私たちの日常生活での頻繁に使われています。興味のある方はぜひ調べてみてください。
さらに、アラビア語の特色として紹介できるものの一つに「アラビア書道」があります。
先ほど述べたようにアラビア語はイスラム教の聖典コーランが書かれた言語であり、ムスリムはアラビア語を「アッラー(神)の言葉」であると見なしています。イスラム教では偶像崇拝が禁止されたことから、コーランの言葉を美しく書く装飾書法が発展しました。モスクへ行けば、モスクの至る所を彩る美しいアラビア文字を見ることができます。
こうしてアラビア書道は発展し、アラビア語圏では、コーランの引用でなくても、美しく装飾されたアラビア文字を目にすることができます。例えば、今ではアジアからヨーロッパに渡航する人の多くが利用するエミレーツ航空のロゴは、アラビア書道で「エミレーツ」を書いたものです。
(*エミレーツ公式HPより)
カタール拠点の放送局アルジャジーラは、アラビア書道で「アルジャジーラ」を炎を模した形で書いています。
(*アルジャジーラ公式HPより)
この文字が芸術となる装飾文字は、アラビア語特有のものともいえるでしょう。
このように、アラビア語やアラビア文字を目にする機会は、実は日本でも隠されているのです。これからさらに需要が増えるであろうアラビア語翻訳ですが、ぜひとも身近なものととらえていただければ嬉しいです。