チラシやポスターを翻訳しよう(Illustrator編)
チラシやポスターを翻訳しよう(Illustrator編)
ここ数年、観光地で配布、展示してあるポスターやパンフレット、広告などのインバウンド系翻訳のお問い合わせをいだだくことが非常に増えてきました。このように、翻訳会社で働いていると、訪日する外国人旅行者の増加を肌で感じます。
数年前は日本語から英語、中国語への翻訳が大半を占めていたのですが、最近では、韓国語、ベトナム語、タイ語などのアジア圏の言語が増えてきています。それだけ様々な国からの旅行者が増えてきているということでしょう。
パンフレットやチラシ、ポスターなどは、デザインやインパクトはもちろん、分かりやすさを重視した作りになっていることが多く、これらはIllustratorで作成されていることがほとんどです。
IllustratorとはAdobe社製のイラストやデザインに特化したグラフィック作成ソフトのことです。広告などのレイアウトデザイン作成に強く、ロゴデータやイラストもこのソフト一つで作成することができ、印刷業界などでは最もスタンダードになっている制作ソフトです。
ここでは、翻訳会社がIllustratorで作成されたドキュメントをどのように翻訳し、DTP作業を行っているのかの基本的な手順や注意点を、「日本語で作成されたポスターを英語に翻訳する場合」を例にご紹介いたします。
Illustratorには画像や写真が使われていることがほとんどです。
このような場合、画像や写真はIllustratorとは別にイメージファイルとして準備されていることが多く、それらの画像をIllustratorにリンクさせて表示させるのが一般的です。お客様からソースファイル(Illustrator)が提供されるとDTP担当者はまず、Illustratorに使用されているイメージファイルがすべて揃っているかを確認します。ここで不足画像があった場合は、お客様にイメージファイルをご提供いただくようお願いをしています。もし不足している画像がお客様の方で見つからない、所有していない場合は、PDFファイルから加工して貼り付けることも可能ですが、解像度が落ちてしまう危険性がありますので、もし翻訳後に印刷を想定しているのであれば、画像ファイルは全て揃っている必要があります。
翻訳対象のIllustratorファイルを開くと、「使用されているフォントがありません」というエラーが出ることがあります。デザインやインパクトを重視して特殊なフォントが使用してある場合、これらのフォントがDTP担当者のPC環境にインストールされていないと、上記のようなエラーが発生します。翻訳されたファイルは、それぞれの言語に合ったフォントをレイアウト時に当て直すため、必ずしもオリジナルのフォントを全て所有しておかないというわけではありません。もし、お客様のリクエストでオリジナルと全く同じフォントで対応する必要がある場合は、ドキュメントで使用されているフォントもご提供いただく必要があります。
上記のファイル検証が終わり、ドキュメントのエラーが解消された後は翻訳作業へと進みます。翻訳者がIllustratorを所有していることはまずないので、そのままIllustratorファイルを渡して作業をお願いすることはできません。
そのため、翻訳が必要なテキストを全て抜き出して、テキストファイルにした状態で翻訳を進めていきます。アウトライン(選択できず画像となっているテキスト)個所があれば直接手で打ち込んでファイルを作成していきます。OCR(Optical Character Reader)といった文字認識ツールが有効な場合は積極的にツールを使用して進めていきます。
翻訳済みファイルは、原文と訳文が併記された状態になるようにします。併記にすることによって編集担当者が原文と対応する訳文を容易に判別できるようになり、張り付けミスなどを防ぐ効果があります。また、多言語翻訳の場合、訳文だけでは判断がつかない文も原文と併記になっていることによって言語が分からない作業者でも編集することが可能となります。
翻訳作業が完了したら、DTP担当者が訳文をIllustratorに入れ込んでいきます。
ただ、テキストを張り付ければ終わり。というわけではなく、言語によってはテキストが原文より長くなってしまったり逆に短くなってしまうことがあります。そのまま配置すると見た目が悪く、全体のデザインにも不具合が出てきます。このような場合はバランスを考えて文字の大きさなどの調整、必要に応じてイラストや写真などの大きさや位置の変更など、原文のイメージを損なわないように注意しながら配置調整をしていきます。またフォントの指定がない時はなるべく原文に近いデザインのものを言語に合わせて設定をしていきます。
その後、訳文テキストと全体のレイアウトチェックを行い、お客様へ納品となります。
以上がIllustratorの翻訳、DTPフローとなります。
Adobeソフトでもう一つ、よくお見積りのお問い合わせをいただくIndesignファイルでの翻訳フローも機会があればどこかでご紹介出来ればと思います。